2009年8月11日火曜日

mainichi shasetsu 20090810

社説:ODAの今後 予算の増額が必要だ

 外務省の政府開発援助(ODA)を担当している国際協力局の組織改編が行われた。有償資金協力(円借款)と無償資金協力、技術協力が別々の課に なっていた従来の体制を見直し、地域ごとの分担にした。それぞれの国ごとに円借款、無償援助、技術協力のいずれが必要か、どのような組み合わせがいいのか などを一体で、検討していくことを目指した見直しだ。

 ODAを巡っては昨年10月、一部の無償援助を除き、実施は国際協力銀行の円借款部門を統合した国際協力機構(JICA)に一元化された。これに 合わせて、有償、無償、技協を問わず国ごとに対応している。これにより、ODAの企画立案を行う外務省、実施を担っているJICAの組織がすっきりした。

 今、日本のODAは重要な時期に差し掛かっている。これまで歴代首相が約束してきたアフリカ向け、アジア向けの援助増額を達成しなければならない。温暖化対策に代表される環境対策でも資金、技術の両面での協力を表明している。

 ところが、援助関係予算は歳出・歳入一体改革の中、減少が続いている。世界的にもODA実績はかつての1位から5位に転落している。ODAの国民総所得(GNI)に対する比率では、先進国中、米国と並んで最下位である。

 これまで日本は海外援助を主要な外交手段としてきたことは間違いない。しかし、一般会計ベースでの削減が続き、じり貧状態に陥りつつある。政府は 円借款を拡大することで事業量を確保し、国際公約を果たすとの方針で臨んでいるが、それにも限界がある。貧困削減などは無償が大半なのだ。

 JICAや外務省などによる現場に根差した案件の発掘、手早い調査や援助決定、そして実施と、日本のODAを被援助国に印象付けるための改革は欠かせない。ただ、それだけで、日本の援助がソフトパワーとして機能するわけではない。何か足りないものがある。

 第一に援助のための資金手当てができないことには、絵にかいた餅に終わってしまう。この点で与野党とも態度を明確にしていない。ODA予算の増額 を実現すべきだ。そうはいっても、予算制約は厳しい。案件の形成に当たっては、国際協力銀行の資金や民間資金との組み合わせを推進すべきだ。第二に援助に 戦略性を持たせることは外交手段としてある程度やむを得ないが、ODAの原点は貧困や低開発からの脱却対策にあることを忘れてはならない。

 景気後退局面では政策は内向きになりやすい。そうした時だからこそ、ODA戦略の展開が必要だ。




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