2009年8月11日火曜日

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クロマグロ:高級トロさらに遠く 取引禁止案

 野生生物の国際取引を規制するワシントン条約で大西洋クロマグロの取引禁止が浮上したのは、国際的な環境保護団体の危機感が背景にある。日本など マグロの消費、生産にかかわる国々は「大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)で漁獲を管理すべきだ」として反対しているが、規制に消極的だったフラ ンスが賛成に回るなど、環境保護派の発言力が強まっている。取引が禁止されれば、国内で出回るクロマグロは半減するとみられ、庶民にとってはますます「高 根の花」になりそうだ。

 日本が輸入する大西洋クロマグロは、地中海で水揚げされる「蓄養」が中心。幼魚を捕っていけすで育てる方式で、クロアチアやマルタ、スペインなど の地中海諸国でここ10年ぐらいの間に盛んになった。06年の水産庁の統計では、この3カ国で日本のクロマグロ供給量の約3割を占める。比較的安価な上、 トロを多く含むことから急速に普及した。

 しかし、幼魚を捕るため資源への悪影響が大きい。ICCATは昨年11月に東部大西洋と地中海のクロマグロ漁獲枠(08年は2万8500トン)を 09年は2万2000トン、10年は1万9950トンに削減することを決めた。専門家で作るICCAT科学委員会は、1万5000トンへの削減を勧告し た。しかし、蓄養にかかわる地中海諸国などの反対で削減幅が圧縮されたため、環境保護団体の反発を招いたとされる。

 今年も11月にICCAT年次会合が予定されているが、この会合で漁獲規制を更に強化できるかどうかが、ワシントン条約締約国会議の行方を左右することになりそうだ。

 一方、国内で取引される輸入クロマグロの価格は昨年秋以降、景気悪化で低迷している。東京都中央卸売市場の月平均価格は昨年8月の1キロ3627 円から12月の2122円まで急落。その後は持ち直し傾向を見せているものの、依然として2000円台にとどまっている。東京都品川区のすし店主(62) は「クロマグロは主力商品。資源が悪化していると言っても、絶滅寸前なんてことはないはず。値下がりしてもお客の注文は増えていない。この上、値上がりす るようなことはしないでほしい」と話した。【行友弥】

毎日新聞 2009年8月10日 21時11分




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