2009年8月11日火曜日

mainichi shasetsu 20090810

社説:衆院選 成長と環境 バランスある対応を

 経済の拡大を促す成長戦略のあり方が問われている。低金利で円安を維持し、輸出主導で成長を図るというこれまでの路線は、世界的な経済危機でつま ずいた格好だ。そして、格差の解消やセーフティーネットの機能強化、所得の再分配により経済の底上げを図ろうという方向で論議が展開されている。

 この成長戦略に絡んでもうひとつポイントとなっているのが地球温暖化問題への取り組みだ。二酸化炭素など温室効果ガスの大幅削減と経済成長の両立が課題だ。

 先進国の責任として日本も高い目標を掲げ、世界をリードしていくというのがあるべき姿だろう。しかし、話はそう単純ではない。

 世界の温室効果ガスの総排出量に占める日本の比率は4%で、米国や中国といった排出大国が大幅に削減しない限り、効果は乏しい。

 そして、途上国が日本に求めているのは資金と技術の供与であり、その一方で、先進国からも日本は、排出量取引で重要な役割を果たすことが期待されている。

 日本が高い削減目標を掲げることは、こうした日本に対する期待を満たすことになる。しかし、それにはコストがかかり、最終的には国民全体でその負担を担うことになる点も考えておかねばならない。

 もちろん、温暖化対策は日本にとって大きなチャンスでもある。長年培ってきた省エネ技術を用い、省エネビジネスで世界をリードすることができれば、日本が受けるメリットは大きい。

 2013年以降の地球温暖化対策の国際枠組みについては、12月にコペンハーゲンで開かれる締約国会議(COP15)で合意を目指す。

 それに合わせる形で、政府は2020年時点の削減目標を2005年比で15%と決めた。一方、民主党は1990年比で25%というより高い目標を掲げている。

 日本としては、年末に向け各国がさまざまな駆け引きを展開する中で、バランスの取れた対応をする必要がある。ただし、基盤が揺らいだ状態で交渉に 臨めば、日本の存在感は薄くなってしまうだろう。そのためには、目標実現のため政策手段に裏打ちされたプランを提示することが欠かせない。

 政府より高い目標を掲げる民主党は、国内排出量取引制度の創設や地球温暖化対策税の検討などを示している。しかし、現実的にみて目標を実現できるのか判然としない。より具体的なプランを提示し、これからの交渉に向けて日本の基盤固めができるようにしてもらいたい。





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