2009年8月11日火曜日

mainichi yoroku 20090810

余録:自転車専用道路

 三浦環は「蝶々(ちょうちょう)夫人」を当たり役に、欧米で人気を集めた日本人ソプラノ第1号だが「街のアイドル」第1号でもあったらしい。明治 中期、東京・上野の音楽学校に入学し、父親の勧めで自転車通学していたころだ▲「自転車美人」と評判になり、新聞小説にも取り上げられた。父親は声楽志望 に反対で、恥ずかしくなって学校をやめる、と計算したという。本人はそんな思惑をよそに、沿道の喝采(かっさい)を浴びてプリマドンナ気分だったかもしれ ない▲道路事情は現代より格段に悪かったから、路面電車や荷車、人力車が行き交う中で脇見事故など起きなかったか。そちらの方が気になる。自転車が日常の 足として定着した今日は、歩道上で歩行者を巻き込む事故の急増が新しい問題になってきた▲大阪のメーンストリート・御堂筋の車道を削り、自転車専用道路を 設けることで、国と大阪市が基本合意した。対策の必要な地域は他にいくらでもある。しかし、都市の顔に当たる大幹線から手を付けることで、市民の関心を高 め、議論に巻き込む意味は大きい▲御堂筋沿線は関西を代表するオフィス街だ。交通費節減のため、商用に自転車で走るケースも多い。3年前、ここに自転車 レーンを仮設して行った社会実験では、歩行者と自転車利用者の双方から、危険防止の効果が高いとして、通行分離を歓迎する声が圧倒的だった▲交差する街路 の専用レーンや駐輪場が整備されれば「自転車で用の足りる街」として新しい価値が生まれる。もちろん、自転車を路上放置しないなどのルール徹底も不可欠 だ。そうなれば、のんびりサイクリングやゆったり街歩きも、もっと楽しくなる。


毎日新聞 2009年8月10日 0時07分




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