2009年3月10日火曜日

asahi shohyo 書評

リーダーシップからフォロワーシップへ [著]中竹竜二

[掲載]2009年3月1日

  • [評者]清野由美(ジャーナリスト)

■ひねった思考が勝利に導く

  会社という組織の経営は、よくスポーツにおけるチーム運営にたとえられる。モチベーションの設定やパフォーマンスのあげ方など、共通する部分は確かに多 い。著者は08年度の大学選手権で2連覇を達成した早稲田大学ラグビー蹴球(しゅうきゅう)部の監督。というと普通は「リーダーシップ」を語りがちなとこ ろだが、対極の「フォロワーシップ」に光を当てたのが本書のミソだ。

 強烈なリーダーシップを発揮した清宮克幸の後任に就いた著者は、「日本一オーラのない監督」と自ら記す通り、カリスマ性が薄いタイプ。しかし、そのキャッチフレーズを自虐ではなく、戦略に転化したところに、凡庸を超えたしたたかさがある。

 「期待に応えない」「他人に期待しない」「できないことはやらない」と、開陳するノウハウは通常とは逆張り。その根底にあるの が「フォロワーシップ」への注目だ。組織は統率者だけでなく、敏感な呼応者がいてこそ機能する。ゆえに自らにフォロワーシップを認め、磨いていけ、という 論旨である。

 著者による大学選手権2連覇の背後には、監督というリーダーがフォロワーシップによってチームを勝利に導いたという、ひとひね りがある。その知的な思考法と、ありがちな根性論やヒロイズム鼓舞ではなく冷静な現実認識を通す展開に、真のリーダーシップが浮かび上がるところが面白 い。

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