2009年3月31日火曜日

asahi education society Shoin Yoshida Yamaguchi

「授業で吉田松陰」山口県教委が奨励 愛国心条項に対応

2009年3月31日10時5分

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写真:吉田松陰(肖像画)=山口県文書館提供吉田松陰(肖像画)=山口県文書館提供

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 山口県教育委員会は4月から、明治維新に大きな影響を与えた長州藩(現山口県)出身の思想家、吉田松陰を授業などで取り上げることを県内すべての公立小 中学校に勧める。改正教育基本法に「愛国心条項」が盛り込まれたことに対応し、今年が松陰の没後150年であることに着目した。都道府県教委が特定の人物 を教えるよう全校に奨励するのは珍しい。

 県教委は09年度の新規事業として「ふるさとの先人に学ぶ教育の推進」を掲げ、「松陰の生き方や業績を題材に様々な取り組みを行う」としている。 県内全20市町教委の学校教育課長や指導主事らを集めた会議で周知する。義務教育課は「具体的な取り組み方は各校に任せるが、例えば、松陰をテーマとした 弁論大会や史跡訪問、カルタ遊びなどが考えられる。朝礼の講話や歌を歌うなどして業績を伝えてもいい」と話している。

 安倍内閣時代の06年に改正された教育基本法には、「教育の目標」の条項に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」 とする「愛国心条項」が加わった。これを反映した改訂学習指導要領が小学校で11年度、中学校で12年度から全面実施されることを踏まえ、県を挙げて取り 組むことにしたという。

 山口県からは松陰のほかにも、伊藤博文や高杉晋作ら維新の志士が多数輩出した。詩人の中原中也や金子みすゞも有名だ。松陰だけを特に奨励する理由について、同課は「没後150年で注目されている。高杉や伊藤もいるが、松陰は彼らを教えた人物だ」と説明する。

 尊王攘夷(じょうい)を説いた松陰は戦前の修身教育に利用された歴史がある。田中彰・北大名誉教授の著書「吉田松陰」によると、「忠君愛国」の理 想的人間像として鼓吹された。同課は「取り上げる松陰の教えは進取の気質や親を敬う気持ちが中心。天皇や日本に関する思想には触れない」と説明する。「松 陰の新しいことにチャレンジする生き方、平等思想は今も大事だ」として、取り組みは10年度以降も続ける方針だ。

 県教職員組合の井上寿幸委員長は「郷土の人物を取り上げることには反対しないが、松陰が偶像化され、評価が絶対のものになるのは感心しない」と話している。(成沢解語、清水謙司)



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