創刊の社会史 [著]難波功士
[掲載]2009年3月8日
- [評者]音好宏(上智大学教授)
■フラッシュバックする甘酸っぱさ
創刊号には、独特のオーラがある。編集者の新雑誌に賭ける思いが詰まっているのはもちろん、その雑誌を世に誕生させた時代の空気が凝縮されているからだろう。
本書は、主に1970年代以降に創刊された若者向けの雑誌を素材に、新雑誌の何を読者が受容していったのかを探ることで、この約40年の時代の息吹を検証した、若者雑誌による現代日本の生活文化史である。
その生活文化史の斬新な分析はもとより、本書をより魅力的にしているのは、著者自身がフラッシュバックする時代の「甘酸っぱ さ」である。自らを「創刊号フェチ」と称するだけあって、著者はマニアックに若者雑誌の創刊号を追いかけ、それらの雑誌群と格闘するわけだが、その格闘の 一端をも赤裸々に紹介することで、筆者を通して時代感覚が見えてくる。神戸在住の著者が、「Popteen」創刊号を求めて、国立国会図書館など都内の図 書館を疲弊しながら彷徨(さまよ)い、「いい歳(とし)してオレ何やってんだろう」と思うあたりも、生活文化のフィールドワーカーとしての面目躍如だ。創 刊号のページをめくるときに浮かび上がる懐かしくも気恥ずかしい思いを、著者は「創刊号の悦楽」と呼ぶのであるが、文字通り、その「悦楽」を堪能できる一 冊である。
- 創刊の社会史 (ちくま新書)
著者:難波 功士
出版社:筑摩書房 価格:¥ 798
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- Popteen (ポップティーン) 2009年 04月号 [雑誌]
出版社:角川春樹事務所 価格:¥ 450
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