2009年3月26日木曜日

asahi shohyo 書評

芸術の春 アート鑑賞に出かける前の一冊

[掲載]2009年3月22日

  • [評者]浜田奈美

 春到来。各地で大型美術展も「宴たけなわ」だ。春も秋に劣らずアート鑑賞にいい季節。お出かけ前に、"芸術の春"を深める本を一読してはどうだろう。

 エッセイストの堀井和子の『みてまわる日々』は、多くのにわかアートファンに勇気をくれる。国内外の美術展にせっせと出かけ、 心に残った作品をさらさらとスケッチし、先々で出会う美味や風景をデジカメ撮影。美術館やギャラリーといった心地よい空間で出会う作品群から「いろいろな 刺激に心が動き始める」感覚を、素直に伝えてくれる。

 『恋する西洋美術史』は、数々の名作から「恋愛」を読み解こうとする。見る人に「静かに」と言わんばかりに口に指をあてた キューピッドの彫像が意味するものは。ポンペイ遺跡の壁画には、なぜ夫婦の性交場面があからさまに描かれているのか。読み進むにつれ、かつては芸術作品が 「メディア」そのものでもあったことに気づかされる。

 ところで、日本の美術展の入場者数歴代1位が四半世紀も不動であることをご存じだろうか。東京国立博物館が74年に開いた「モ ナ・リザ展」の約151万人。同館は07年にもダビンチ展で80万人近くを集め、日本人の「ダビンチ好き」を立証した。『レオナルド・ダ・ヴィンチの生 涯』は、英国人ノンフィクション作家による渾身(こんしん)の伝記。650ページを超える大作にもかかわらず読みやすく、美術史を詳しく知らずともダビン チの生涯に引き込まれ、十分に熟知できる一冊だ。

 06年のヒット映画「ダ・ヴィンチ・コード」では美術史的なエピソードが物議をかもしたが、『ミケランジェロの暗号』は、彫刻 家ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井画に描いた「メッセージ」を、2人の著者が独特の観点から大胆に読み解いた。120点に及ぶ図版も美しい。

表紙画像

恋する西洋美術史 (光文社新書 384)

著者:池上英洋

出版社:光文社   価格:¥ 924

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ミケランジェロの暗号—システィーナ礼拝堂に隠された禁断のメッセージ

著者:ベンジャミン ブレック・ロイ ドリナー・Benjamin Blech・Roy Doliner

出版社:早川書房   価格:¥ 3,150

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ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

著者:ダン・ブラウン

出版社:角川書店   価格:¥ 580

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ダ・ヴィンチ・コード(中) (角川文庫)

著者:ダン・ブラウン

出版社:角川書店   価格:¥ 580

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ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)

著者:ダン・ブラウン

出版社:角川書店   価格:¥ 580

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