2008年5月1日木曜日

asahi shohyo 書評

物語編集力 [構成]イシス編集学校

[掲載]2008年04月27日
[評者]梶山寿子(ジャーナリスト)

■基本は「物語を動かすこと」

 いよいよ大型連休に突入。発想を広げるため普段読まない本を読むチャンス。そこで紹介するのが本書だ。「えっ小説の書き方?」と思うかもしれないがサブタイトルには「人を動かす。仕事をつくる。」とある。

 あふれる情報のなかから必要なものを的確に選択、整理して再構成する情報編集力は現代人必須の能力。その基本となるのは「物語を動かすこと」だと、監修者である知の編集人、松岡正剛は述べている。

 企画書やプレゼン、営業トークや上司への報告に至るまで、語られる内容に物語があれば伝達力や説得力は増す。例えば「王が死に、王妃も死んだ」と 事実を並べるより「王が死に、王妃が悲しみの余りに痩(や)せ細り、死んだ」と物語らしく因果関係を加えたほうが印象もぐっと深まる。

 以前本欄で紹介したD・ピンクの『ハイ・コンセプト』など、物語を語る力がこれからの社会で重要になることを論じる本は多い。本書はその実践編 か。古代の英雄伝説が「スター・ウォーズ」になったように、多くの物語には原型となる「マザー」がある。この型を活用して物語を編む方法を伝授するという 趣向。ネット上の編集学校の受講生が書いた3千字の物語と、その講評・解説を読むうちに「ワールドモデル」「ナレーター」といった物語の5大構成要素がお ぼろげながらつかめる。ひとつの型から生まれる物語の多様さや、受講生の職業の幅広さも目を引く。


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