2008年5月13日火曜日

asahi shohyo 書評

コーヒーに憑かれた男たち [著]嶋中労

[掲載]週刊朝日2008年05月16日号
[評者]温水ゆかり

■カリスマ達の"コーヒー道"

 人物列伝+蘊蓄。自家焙煎のカリスマ達の姿を通して"本物のコーヒーとは"を伝える。

 登場するのは銀座「カフェ・ド・ランブル」の関口一郎氏、地域の人々と共にある山谷こと南千住「カフェ・バッハ」の田口護氏、村松友視氏(視は示 に見)も通う吉祥寺「もか」の標交紀氏。三者はおいしいコーヒーという同じ峰を目指しながら、登山口も到達した山も違う。関口氏は外国の文献で生豆は寝か せると質が向上すると知り、自宅にエイジング・ルームを備えるオールドクロップ(枯れ豆)派の教祖に。田口氏はドイツコーヒーに惹かれ、職人のカンは数値 化して共有すべきという革新性で沖縄サミットのコーヒーを担当(使われたのは我々も買えるバッハブレンド)。標氏は向かいの焼鳥屋の匂いに対抗してフライ パンで煎ってみたのが自家焙煎に開眼するきっかけ。文庫になる前惜しくも亡くなったが、生涯鬼気迫る求道者だった。

 職人ものでも、寿司などと違って世界の見取り図の中で日本のコーヒー文化を論じているのが風通しいい。だってコワイいよ、コーヒー一杯で説教食らうのは。著者は「喫茶店経営」の元編集長。この方、明るい"頑固おやじフェチ"です。

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