2008年5月27日火曜日

asahi shohyo 書評

3日間を生き延びるためのサバイバル術 『大震災から家族を守る—アウトドアのグッズと知恵』

2008年05月27日
[評者]落合早苗

 四川大地震発生から約半月。余震や二次災害のおそれなど、まだ予断を許さぬ状態がつづいている。亡くなった方々には心よりご冥福をお祈り申し上げ、また被災された方々には心よりお見舞い申し上げたい。

 自然災害はいつ起こるかわからない。なかでも地震は、最も予測が困難な災害である。緊急地震速報もまだうまく稼働しているとはいいがたい。もし、 今、大規模な地震が起きたら…。地震大国といわれる国に住まう私たちには、常にその不安はつきまとっている。万一への備えは大丈夫だろうか。

  『大震災から家族を守る −アウトドアのグッズと知恵』(荒川じんぺい/中央公論新社)は、 サブタイトルの通り、アウトドアの発想を災害時に転換したという点で、興味深い書。著者はアウトドアの達人で、不便さを甘受し、自然界を畏怖、共生すると ころに震災時と通ずる精神を、本書において言及している。大規模な自然災害時には、救援活動が本格化するまで3日間はかかるという。本書ではその3日間を 生き延びるためのサバイバル術が記されている。

 記載もかなり具体的だ。非常持ち出し品、日ごろからの備え、閉じ込められた際の脱出方法、応急手当の方法、自宅で地震に遭遇した場合から外出先での場合まで、およそ想定しうるケースについてを網羅。地震だけでなく、そのほかの自然災害時にも応用できそうだ。

 1995年8月中央公論の文庫書き下ろし版(現在は品切れ重版未定)が底本で、阪神大震災の影響を大きく受けており、アウトドアというよりもっと シリアス。備えがあっても憂いは払拭できるものではなく、また本書のようなハウツーは使われないに越したことはないが、一読するだけでも、不安は多少なり とも軽減されるだろう。

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大震災から家族を守る—アウトドアのグッズと知恵
著者:荒川 じんぺい
出版社:中央公論社
価格:¥ 550

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