2009年6月4日木曜日

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逮捕から17年「判断遅すぎる」 足利事件・刑執行停止

2009年6月4日16時10分

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写真:菅家利和受刑者は朝日新聞記者にあてた手紙でも無実を訴えていた菅家利和受刑者は朝日新聞記者にあてた手紙でも無実を訴えていた

写真:90年5月に発生した足利事件で、当時4歳だった女児が遺棄された現場。菅家受刑者は91年12月に逮捕された=足利市岩井町90年5月に発生した足利事件で、当時4歳だった女児が遺棄された現場。菅家受刑者は91年12月に逮捕された=足利市岩井町

 90年代初頭に実施されたDNA型鑑定の結果が再鑑定で覆されていた「足利事件」をめぐり、東京高検は受刑者の刑の執行停止という異例の判断に踏み切った。冤罪を訴え、早期の釈放を求めてきた弁護団からは評価する声が出る一方、判断が遅すぎるとの反発の声も上がった。

 東京・霞が関の東京高検では4日午前、渡辺恵一次席検事が、「刑の執行を停止する」などとしたコメントを淡々と読み上げた。

 「再審で無罪論告をするのか」と問われ、「釈放措置がすべてを物語っている」と否定しなかった。刑の執行停止については「厳しく受け止めている」と述べた。

 再審請求審では、検察側と弁護側がそれぞれ推薦した鑑定人2人が、どちらも「DNA型が一致しない」とする鑑定結果を出した。検察側は刑の執行は停止し たものの、弁護側が推薦した本田克也・筑波大教授(法医学)の鑑定については「信用性に欠ける」と主張している。本田教授は「釈放は大変結構なことだ。し かし、なぜこのタイミングなのか。20ページ余りの鑑定書を読んで結論を出すのに、なぜ1カ月もかかるのか全く納得がいかない」と批判した。

 菅家利和受刑者(62)の弁護人を務める渋川孝夫弁護士は「良かったのひとことだ。検察にも良識があったのかと思う。ただ、本当なら、再鑑定の結 果が出た時点で釈放すべきだった」と語った。佐藤博史弁護士は「誠に一方的で唐突な釈放。17年半も自由を奪った人に対し、自らの責任の重さを自覚しない 行動だと思う」と声を荒らげた。

 弁護団によると、菅家受刑者は先月8日、「DNA型は不一致」とする鑑定書を千葉刑務所でガラス越しに見せられ、涙を流した。「一日も早く再審開始をしていただいて、一刻も早く出してもらって両親のお墓参りをしたい」と語ったという。

 4月11日付で、朝日新聞記者に寄せた手紙にも「私は無実」と繰り返し書かれていた。「再審開始になると信じて毎日すごしております」ともつづられていた。

     ◇

■足利女児殺害事件の経緯

90年5月 栃木県足利市内で女児が行方不明。翌日、渡良瀬川河川敷で遺体が見つかる

91年11月 警察庁科学警察研究所のDNA型鑑定で、菅家受刑者のものと「一致」との結論

  12月 菅家受刑者を逮捕・起訴

92年2月 公判で菅家受刑者が起訴事実を認める

  12月 菅家受刑者が被告人質問で一転、否認

93年7月 宇都宮地裁が求刑通り無期懲役判決

96年5月 東京高裁が菅家受刑者の控訴棄却

00年7月 最高裁が上告棄却、無期懲役判決が確定

02年12月 菅家受刑者と弁護団が独自のDNA型鑑定を新証拠に宇都宮地裁へ再審請求

08年2月 宇都宮地裁が再審請求を棄却。弁護団が東京高裁に即時抗告

  12月 東京高裁がDNA型の再鑑定を決定

09年5月 再鑑定の結果「不一致」との結論




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