2009年6月4日木曜日

asahi shohyo 書評

数学者が読み解く仏教の世界 冥途の旅はなぜ四十九日なのか [著]柳谷晃

[掲載]2009年5月27日朝刊

■仏教って、こんな豊かな世界観を持っていたのか!

  本書を一読し、目からウロコが落ちる思いを抱いた人は多いのではないか。私たちの生活で身近な宗教といえば仏教だが、当たり前とされている事柄にもかかわ らず、意外とその理由を知らずにいることが多い。早い話が、本書の題名「冥途の旅はなぜ四十九日なのか」である。また、除夜の鐘を百八回つく行為にも実は 仏教特有の「数学的世界」が隠れていると著者はいう。あるいは、仏教建築の五重塔に目を転じれば、そこには現代の最新科学もびっくりの計算し尽くされた設 計がなされている。

 そんな、私たちになじみ深い仏教思想や習慣などに数学的視点を取り入れて、仏教が本来持っている広大な世界観をわかりやすく解き明かしたのが本書である。これまでにない、知的冒険に満ちた仏教ガイドといえよう。

 本書を読んでいると、仏教が精神的な教えを説く宗教なだけでなく、昔の人たちの鋭い自然観察と豊かな想像力の塊のような教えで もあることがよくわかる。私たちの祖先がこんな豊かな世界観を持って生活していたのかと感動を覚えるとともに、同じ日本人・東洋人であることが誇らしく思 えてくる一冊だ。

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