2009年6月4日木曜日

asahi culture film movie Kate Winslet

アカデミー主演女優賞のケイト・ウィンスレット 「愛を読むひと」を語る

2009年6月4日

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写真ケイト・ウィンスレット写真「愛を読むひと」から

 戦争犯罪という絶対悪と、それを支えた素朴な感情。悲しいほどの落差を抱えた人間の罪は、どんな物差しで量ればいいのか。ドイツを舞台にした米映画「愛 を読むひと」は、そんな問いを観客に突きつける。この作品で第81回アカデミー賞主演女優賞を受けたケイト・ウィンスレットは19日の日本公開を前に「役 柄の恐怖を克服するのが出発点だった」と語った。(ニューヨーク=立野純二)

 世界的なベストセラー小説「朗読者」(ベルンハルト・シュリンク著)が原作。戦時中にナチス親衛隊員だった過去を背負う女性、ハンナ・シュミッツの半生が、50年代のある夏に出会った年下の男性から寄せられる息の長い慕情を通じて描かれる。

 33歳のウィンスレットにとって過去の作品と違った点は、すでに物語を熟知していたことだ。撮影の7年前に小説を読み、「ハンナ役を演じきれる女優は誰だろう」と想像をめぐらせていたという。

 スティーブン・ダルドリー監督から白羽の矢を立てられた時は「耳を疑った。自分は若すぎると思いこんでいたから。この役柄にはとてつもない歴史を抱えた複雑な背景がある。それを正しく演じなくてはいけない責任があるという思いは、次第に恐怖感になった」と振り返る。

 演じる人間を理解することは、俳優にとって不可欠と信じている。しかし、「ナチスに同情はできない。ましてやユダヤ人の虐殺にかかわった人間の胸 中なんて分かりっこない」。自己投影が難しい役柄に「登山のような思案の毎日。答えは出なかったけれど、ハンナの人生の選択を狭めたものは何だったのか、 それだけは理解できた。それが心の中の救いだった」。

 撮影のほとんどはドイツで行われた。この国でも戦争の記憶は風化しつつある。スタッフの多くを占めた若いドイツ人らは映画製作を通じ、男性主人公のミヒャエル・ベルクさながらに自国の歴史の闇に直面した。撮影中に涙を流す者もいたという。

 「物語のテーマは、人間の『悪』を決めつけることへの問いかけだと思う。観客の胸中で、悪を憎む自然な道徳観が奇妙に揺らぐような感情が生まれれ ば、それは俳優冥利(みょうり)につきる。多くの人に思考してもらうのは、俳優がこの世界に存在する大切な意義の一つだと思うから」

 6回目のオスカー候補で初受賞。「私はいつも候補止まりの俳優と思っていた。今回は私だけじゃなく、多くのドイツ人と一緒にもらった勲章。それに、8歳の娘と5歳の息子が、受賞を記憶してくれる年齢になってくれていたことがうれしい」



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