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最古の新約聖書、オンラインで公開へ
羊皮紙にギリシャ語で書かれたシナイ写本の一部がオンラインで公開される。(ロイター)
1600年以上前にギリシャ語で書かれた最古の聖書写本の1つが今週、世界中の人たちに向けて初めてオンラインで公開される。
現存する最古の完全な新約聖書とされているシナイ写本は現在、世界の4つの機関に分散して所蔵されているが、そのシナイ写本の一部が7月24日以降インターネットで閲覧できるようになると所蔵機関の1つであるドイツのライプチヒ大学は発表している。
発表によると、来年7月に予定されている写本全体の完全公開に向けた第一歩として、マルコによる福音書、旧約聖書の一部、およびその後何世紀にもわたって追加されてきた注釈などの高解像度画像がwww.codex-sinaiticus.netで公開されるという。
シナイ写本の一部を管理しているライプチヒ大学図書館のディレクター、ウルリッヒ・ヨハンネス・シュナイダー氏は、この写本をオンラインで公開することで、キリスト教徒にとって「根本的な重要性」を有する文書を誰もが研究できることになるだろうと語っている。
「手書きの写本がオンラインで公開されるというのは、これまでにない取り組みだ。仮想世界を豊かにすることにもなるだろう。YouTubeともちょっと違う」と同氏。
同氏によると、古代ギリシャ語に精通していない人たち向けに英語とドイツ語で良質の翻訳も提供されるという。
なお同氏によると、専門家の間では、シナイ写本はバチカン写本とともに現存する最古の聖書とされており、西暦350年ごろに書かれたものとみられている。
羊皮紙に書かれたこの写本はシナイ山のふもとにある聖カタリナ修道院から幾度かに分けて欧州に持ち込まれたものだ。ドイツ人神学者のコンスタンチ ン・フォン・ティッシェンドルフ氏は1844年に同修道院でこの写本を発見し、その一部をライプチヒに持ち帰ることを認められた。
ティッシェンドルフ氏はその後、ロシア皇帝の支援を得て1859年に同修道院を再訪し、その結果、残りの多くのページがロシア皇帝に献上されることになった。それらのページはソビエト連邦が1933年に大英博物館に売却するまで、サンクトペテルブルクに置かれていた。
「最初に持ち帰った分は確かにティッシェンドルフ氏に贈られたものなのだろう。だが、2回目に持ち帰った分については、それほど定かではない。当時の修道士らは皆、契約書に署名したが、不公平な条件を強いられたとのうわさが根強く残っている」とシュナイダー氏。
「恐らく、多少は真実が含まれているのだろう」と同氏。
その後の発見の結果、オリジナルのシナイ写本は現在、欧州と中東の4カ所に分散して所蔵されている。オリジナルのシナイ写本は、旧約聖書のほぼ半分が欠けている。
今回のプロジェクトは、ライプチヒ大学がロシア国立図書館、大英博物館、聖カタリナ修道院と共同で着手したもの。このプロジェクトでは、エジプトで初期のキリスト教信者によって書かれたとされている聖書が成立した状況を詳述することになっている。
「かつてあまりに貴重で誰にでも見せるわけにはいかなかった世界最古の文化遺物を、技術のおかげで、こうして実に高い品質で世界中に公開できるというのは素晴らしいとしか言いようがない」とシュナイダー氏は語っている。
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