2008年7月9日水曜日

asahi shohyo 書評

アメリカの高校生が読んでいる 経済の教科書 [著]山岡道男、淺野忠克

[掲載]2008年7月6日

  • [評者]清野由美(ジャーナリスト)

■賢い消費者になるために

 私たち日本人には、お金の話は恥ずかしい、という意識が刷り込まれている。よく解釈すれば、あからさまな欲望を抑制する美徳であるが、この時代においては社会への無知につながる恐れが大きい。その無知は人生に大きなダメージを与える。

 日本に先んじる消費の親分国、アメリカでは90年代にクレジットカードによる若者の自己破産が深刻化した。それを機に NCEE(アメリカ経済教育協議会)という非営利の学会組織が、経済リテラシーを高めるためのフレームワーク(指導要領)を作成。それを基準に編纂(へん さん)された高校生用の経済教科書を、日本の教育現場にあてはめるとこうなるだろう、と著されたのが本書。だから正しくは「アメリカの高校生が読んでいる 経済の教科書、を下敷きにした日本の高校生用の経済の教科書」。少々、ややこしい。

 ここでの経済学とはケインズやマルクスが登場する"学問"ではなく、消費者の立場に立つ"パーソナルファイナンス"だ。つまり 「インフレが発生する理由」ではなく、「インフレになった時に、一般家庭ではどのように対処したらいいか」を教えるのだ。家計、企業、金融、政府、貿易と いう五つの要素から、賢い消費者になるための知識を解説する内容は「教科書」という名の通り、きっちりと硬い。ただ、これを読みこなせる高校生であれば、 そもそも自己破産の確率も低いのでは、とも思うが。

表紙画像

アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書

著者:山岡 道男・淺野 忠克

出版社:アスペクト   価格:¥ 1,680

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