2008年7月20日日曜日

asahi shohyo 書評

巣鴨プリズンからの「教訓」

2008年7月19日

 東京裁判(極東国際軍事裁判)で1948(昭和23)年、東条英機ら7人に絞首刑判決が下ってから、今年はちょうど60年にあたる。

 昭和史研究で知られる保阪正康さんは、この東京裁判を「史実であること、功罪両面があること、20世紀の教訓であること」の3点からとらえて、朝日新書『東京裁判の教訓』(7月刊)を書き下ろした。

 このところ、この裁判に対しては、「東京裁判史観」とか「勝者の報復裁判」といったようなレッテルをはる論調が多いが、そんなことをしても意味がない、と保阪さんは批判する。

 東条ら死刑になった7人についても、個々人の性格がどうだったかを問うのでなく、軍隊の最高指揮権は天皇の大権に属し、政府も 議会も軍には口出しできない、とする統帥権独立という「恐るべきドグマにつかっていた日本の軍事組織の偏頗(へんぱ)な姿が批判されなければならない」と 書く。

 A級戦犯の1人だった鈴木貞一、巣鴨プリズンの教誨師(きょうかいし)だった花山信勝氏らから直接聞いた証言や、東条の巣鴨プ リズン時代のメモなどに最近明らかになった新資料を加えた分厚いデータを用いて、保阪さんが次世代に伝えたいと考える「教訓」が、この新書にほとばしって いる。

表紙画像

東京裁判の教訓 (朝日新書 120)

著者:保阪 正康

出版社:朝日新聞出版   価格:¥ 777

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保阪正康
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