2008年7月7日月曜日

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「平泉」世界遺産登録見送り 国内では初の「落選」

2008年7月7日10時39分

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写真中尊寺金色堂=岩手県平泉町写真世界遺産登録の審議結果について、厳しい表情で報告を受ける高橋一男・平泉町長=7日午前9時40分、戸村登撮影図

 【ケベック〈カナダ〉=加賀元】国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は6日、「平泉—浄土思想を基調とする文化的景観」(岩手県平泉町な ど)の世界文化遺産登録の見送りを決めた。再度の審議は3年後めど。日本はこれまで、自然遺産と文化遺産合わせて14件が登録されているが、「落選」は初 めてだ。

 委員会での審議で平泉は、登録、情報照会、登録延期、不登録という4段階の評価のうち下から2番目の「登録延期」との結論になった。ユネスコの諮 問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)は5月に「普遍的な価値の証明が不十分」などの指摘をして、「登録延期」の勧告を出していた。政府は世界遺産委員 国(21カ国)に「平和の希求」と「自然との融合」をキーワードに価値をアピールしたが、評価は変わらなかった。

 平泉は、12世紀に奥州藤原氏が仏教思想に基づき完成させた東北の政治・行政上の拠点。国宝の金色堂がある中尊寺、特別名勝の浄土庭園がある毛越(もうつう)寺など九つの構成資産からなる。

 日本政府代表団長の近藤誠一・ユネスコ日本政府代表部大使は「委員会の審議の中では、平泉の価値を評価する発言もあった。しかし専門機関の意見を無視するわけにはいかなかった」と語った。

      ◇

 文化庁の内藤敏也・記念物課長は、落選の理由について「平泉の浄土思想など日本独自の伝統や思想を、外国に理解してもらう難しさを感じた」。今後 に関しては「現実的には3年後の世界遺産委員会を目指すことになると思う」と話した。また「平泉の推薦書の再提出が最優先」とし、国内の他の候補の推薦は 後になるとの見方を示した。

 渡海文部科学相は「延期は大変残念だが、平泉には世界遺産にふさわしい価値があり、引き続き登録を目指して最大限の努力をしたい」とのコメントを発表した。

 世界遺産を巡っては、日本からは「平泉」のほかに「古都鎌倉の寺院・神社ほか」(神奈川県)など7件の文化遺産と、1件の自然遺産(小笠原諸島・東京都)が暫定リストに記載されている。

 さらに、文化庁が暫定リスト改訂に合わせ公募した国内の提案物件は06年に24件、07年には13件にも及び、全国で世界遺産の「登録熱」が高まっていた。今回の「平泉」の結果は、こうした地域での世界遺産ブームにも影響を与えそうだ。



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