人類が消えた世界 [著]アラン・ワイズマン
[掲載]2008年7月13日
- [評者]小柳学(編集者)
明日人類がいなくなったら、地球はどうなるのか。
まず排水機能が失われ地下から水があふれ、街に新しい水路ができる。地下鉄は水没。一方で、石油化学工場や油田で次々と火災が起きる。大量の毒で大気が汚染され、短い「核の冬」が訪れるが、土壌は燃えた炭素で肥沃(ひよく)となり野草が生える。
アメリカのジャーナリストが世界各地の科学者らに取材したノンフィクション。プラスチックや濃縮ウランなど、長きにわたって残る物質にも触れる。「人間が地球に与えている負荷の大きさに驚いた」といった感想が多く、科学本としてだけでなく、環境本としても読まれている。
30〜50代を中心にまんべんなく売れている。男性が7割を占める。若い人が400ページを超える活字量にひるまないように、 薄い紙を使って本を厚く見せないようにした。また、日本版では人類が消えたのちのニューヨークを描いたイラストを口絵に使い、ビジュアルに訴えた。
近年ライトノベルや映画では、人類消滅後という設定が多い。「SFではよくある設定です。この本の読者もSFファンが多い」と 編集担当の小都一郎さん。人類消滅後、テレビ画像などの「電波」だけが宇宙を飛びつづけるという指摘など、たしかにSFじみている。「妙になつかしい」と いう感想もある。
ところで、本当に人類が消えることがあるのだろうか。著者は、ウイルス感染や人口増加による自滅など、その可能性があることを聞きだしている。「地球規模で自然の栄枯盛衰をうたった『平家物語』のような本」と小都さん。人類の終わりの鐘はもう鳴り始めているのかも。
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鬼澤忍訳、7刷6万5千部
- 平家物語 (岩波新書)
著者:石母田 正
出版社:岩波書店 価格:¥ 777
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