2008年7月6日日曜日

asahi shohyo 書評

マインドセット—ものを考える力 [著]ジョン・ネスビッツ

[掲載]2008年6月29日

  • [評者]勝見明(ジャーナリスト)

■意識の持ち方を伝える

 跳び箱の跳び方について、手足の使い方などノウハウを細かく書いた本と、「思い切り踏み切ったら空を飛ぶように跳ぶ」と意識の持ち方を伝える本とでは、つい手に取るのは前者だが、本当に跳べるようになるのは後者だ。思考法の本がブームだが、本書は後者のタイプの典型だ。

 著者は80年代に近未来の潮流を予測したベストセラー『メガトレンド』で有名な未来学者。同じことを見ても「きみと同じ結論」を出せないのはなぜだと友人から聞かれ、違いはマインドセット(ものの考え方)にあると気づき、本書が生まれた。

 「変わらないもののほうが多い」「未来はジグソーパズルだ」「結果を得るには問題解決よりもチャンスを生かすべし」等々、著者のマインドセットが11個挙げられ、後半、それらをもとに、文化、経済、中国などのテーマ別に未来が予測される。

 例えば、中国については中央ではなく、ハルビン、南京、浦東など地方での超現代的な新都心の出現をジグソーパズルのピースのようにつなげ、これほど分権化が進む国はないと読み、「中国では外縁部が中心」という古い格言が現実化すると予測。

 活力ある「チャンス追求者」たちの国になった中国と、規制を好む「問題解決者」があふれ、衰退の道をたどるヨーロッパとの対比も独特だ。

 受け売りではなく、自分でピースをみつける融通無碍(ゆうずうむげ)な思考の世界が刺激的だ。

    ◇

 本田直之監訳、門田美鈴訳

表紙画像

マインドセット ものを考える力

著者:ジョン・ネスビッツ

出版社:ダイヤモンド社   価格:¥ 1,680

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