水田の中にモスク、イスラムと日本の文化融和図る 岐阜(1/2ページ)
完成したモスク。水田の緑に白い建物が映える=岐阜市古市場東町田、松田写す
モスクの内部
岐阜市北部の緑の水田に浮かぶように、丸いドームの白い建物が完成した。東海地方で最大規模となる、イスラム教の礼拝所「モスク」だ。突然の異文化施設の出現に周辺住民に戸惑いもあるなか、イスラム文化と日本文化の融和モデルとなれるか。
建設には、集まった浄財など約1億3千万円が充てられた。延べ約330平方メートルの施設は70人程度を収容できる礼拝所のほか、イスラム資料を収蔵する文化センターや学習室を備える。
建設した丸平建設(岐阜県大野町)は初めて受けた外国人からの仕事だった。建設所長の村木哲也さん(45)はアラビア文字が書かれたタイルの上下がわか らず、礼拝前に手足を洗う沐浴(もくよく)室をシャワー室と勘違いしたこともあった。「デザインの違いはあるが、話を聞いてみると日本とそんなに変わらな い。お互いの文化が理解できた」と村木さん。
27日に地元である開所式には、イスラム圏の在日大使館関係者やイスラム研究者に加え、周辺の日本人住民も参加する予定だ。
地元の黒野自治会連合会の西垣安之会長(88)は「『モスクに遊びに来てください』と気軽に声をかけられ、いまでは心配はほとんどしていない」と話す。
だが、日本社会に浸透しているキリスト教と違い、イスラム教への認知度合いはまだ薄い。世界各国でオイルマネーによる投資活動に期待が集まるが、地域社会がイスラム文化を受け入れられるかは別問題だ。
約1400平方メートルの敷地が買いつけられた約1年前、住民たちは顔を合わせると、戸惑いや不安を口にしたという。建設の中心となった、パキスタン人の貿易商クレシ・アブドルワハブさん(50)が「道で会えば話しかけてください」と説いて回った。
(2/2ページ)
完成したモスク。水田の緑に白い建物が映える=岐阜市古市場東町田、松田写す
モスクの内部
イスラム教徒はメッカに向けて1日5回の祈りをささげ、金曜日に集まって礼拝する習慣があり、モスクには日本の寄り合い所的な意味もある。
クレシさんは98年に東海地方で初の本格的なモスクを名古屋市中村区に開設した。それ以前は借りたアパートに集まって礼拝していた。聞き慣れない外国語の祈りを耳にして周辺住民が不快にならないようにと、夏でも窓を閉め切ったが、退去を迫られたこともあったという。
体育館などを借り、名古屋では金曜礼拝には2千人近くのイスラム教徒が集まることもある。岐阜市では300人程度が集まるという。
クレシさんたちの説得に周辺住民の不安や戸惑いは弱まった。だが、いぜんとして「過激派が起こした同時多発テロなどイスラム教は怖いというイメージがあ る」「けんかや紛争が起きるんじゃないか」「地域のマナーを守らずゴミがほったらかしになるのではないか」という声も地元に残る。
宗教法人「日本ムスリム教会」(東京都渋谷区)によると、国内にあるモスクの数は50〜60カ所程度とみられている。
イスラム文化圏での日常のあいさつは「アッサラーム アライクム」。アラビア語で「神の平和があなたの上に」という意味だ。「イスラムと日本の文化の交流の場にしたい」。クレシさんは、完成した施設にそんな祈りをささげている。(松田昌也)
0 件のコメント:
コメントを投稿