アイヌ古式舞踊、ユネスコ無形文化遺産に
北海道内唯一の国重要無形民俗文化財「アイヌ古式舞踊」が来年9月、国際的にも保護・尊重されるにふさわしいとして、ユネスコ(国際連合教育科学文化機 関)の無形文化遺産一覧表に記載される。文部科学相の諮問機関・文化審議会の分科会が雅楽や京都祇園祭の山鉾行事など13件とともに国内提案候補と決め、 文化庁が30日に発表した。
アイヌ古式舞踊は、祭祀(さいし)の祝宴や民族儀式で披露される伝統的な歌や踊り。踊りに合わせて歌う歌と踊りを「リムセ」、座って歌うのを「ウポポ」という。札幌、千歳、旭川、帯広、白糠、弟子屈など15市町に17の保存会がある。
ユネスコの無形文化遺産は、失われつつある文化を国際的に保護する必要性があるとして03年、総会で無形文化遺産保護条約を採択。日本を含む30カ国以上が参加して06年4月に発効した。各国政府が選んで提案すれば記載されるが、保護のための財政措置などは特にない。
文化庁は国指定・選定の「重要無形文化財」「重要無形民俗文化財」「選定保護技術」から国内提案候補を選び、区分ごとに指定時期の早いものから順 に選んでいくことにしていた。アイヌ古式舞踊は84年1月に国重要無形民俗文化財に指定されており、同庁の基準に照らせば今回は対象外になるはずだった。
ところが、アイヌ民族を取り巻く状況は、6月に先住民族と認めるよう政府に求める国会決議が採択されるなど一変。文化庁は、日本の文化の多様性を示す観点から「特別枠」でアイヌ古式舞踊が提案候補に入った。
札幌ウポポ保存会の島崎直美事務局長は「世界的に認められるのは光栄で、とてもうれしい。今後もアイヌ古式舞踊の歌や踊りを、誇りと自信を持って次世代に受け継いでいきたい」と話した。