牛乳よ、お前もか 供給不足、再値上げの可能性
2008年05月30日03時02分
牛乳が品薄になりそうだ。酪農家の廃業や乳牛の飼料高騰が響き、北海道を除く46都府県で原料となる生乳の生産が減少している。乳価の再値上げの可能性もある。品薄が続く家庭用バターに続き、家計や学校給食に影響を与えそうだ。
牛乳が品薄になりそうなのが、北海道を除く46都府県。消費期限が短い牛乳は、消費地の近くで生産された生乳から加工される。生産者団体の中央酪農会議 によると、46都府県の合計では4月、牛乳向け生乳生産量が前年同月比で1.7%減り、生乳全体も同2.6%減だった。5月も減産が避けられない見通し だ。
06〜07年度は生乳の減産計画が立てられていたが、08年度は一転して2.4%の増産が求められている。チーズなど乳製品の国際価格が高騰し、国産の需要が高まっているのに対応するためだ。
北海道の4月の生乳全体の生産量は同3.1%増。牛乳向けとして首都圏などの乳業メーカーの工場に運ぶこともできるが、北海道では大手メーカーが 相次いでチーズの新工場を稼働させたり、品薄が続くバターを増産したりしている。北海道の生産者団体は「牛乳向けに例年以上に供給するのは難しい」とい う。
牛乳の需要は5月から伸び、学校給食がない7月後半から8月まで落ち着き、9〜10月に再び高まる。生乳を牛乳に優先的に回すなどしても北海道以外では地域によって品薄になりかねないという。
少子化で消費量は減少傾向だが、同会議は「牛乳生産の減少幅が需要の減少幅を上回る」と懸念。門谷広茂専務理事も29日の会見で「このままでは生乳を供給できなくなる恐れがある」と述べた。
酪農家の減少もある。同会議の29日の発表では4月の全国の酪農家数は同5.2%減の2万1790戸。北海道は2.3%減だったが、46都府県は6.6%減だった。
トウモロコシの高騰で、4〜6月期の配合飼料価格は07年10〜12月期より16%上昇。飼料高騰で酪農家の廃業が増え、乳牛の飼料を減らす動きも強まって生乳生産量が減る「悪循環」が続きそうだ。
同会議は、乳価値上げなどで生乳の減産基調を食い止めるべきだとしている。ただ、乳価は今年4月に上がったばかり。乳業大手3社の牛乳の希望小売価格は4月に30年ぶりに3〜7%程度値上げされた。再値上げとなれば、消費者の反発も招きかねない。(伊藤裕香子)
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〈酪農の現状〉 酪農家数の減少に歯止めがかかっていない。中央酪農会議によると、08年4月現在の2万1790戸は、ピークだった1963年 (41万7600戸)の約19分の1。規模拡大や生産性向上は進んだが、最近の世界的な飼料価格の高騰などの影響で、特に中山間地や小規模酪農家が多い地 域での廃業が目立つ。酪農家の08年4月の前年同月比減少率は東海で8・3%、四国で8%、関東で7・1%などだった。
生乳の価格(乳価)は、飲用牛乳などの用途ごとに生産者団体と乳業メーカーの毎年度の交渉で決まるが、08年度は最近の酪農家の窮状も考慮し、30年ぶりに上がった。