2008年4月9日水曜日

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サンゴの敵・オニヒトデ本州へ 黒潮に乗り一気に北上

2008年04月09日15時15分

 沖縄でサンゴの天敵「オニヒトデ」が大量発生すると、幼生が黒潮に乗って本州や四国にまで押し寄せ、被害が飛び火することが、東京工業大の灘岡和夫教授 (沿岸環境学)らの研究で分かった。05年にラムサール条約に登録された和歌山県・串本などの沿岸では近年、オニヒトデによるサンゴの食害が問題化してい る。沖縄から流れ着いた幼生が引き金になっている可能性が高いという。

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駆除されたオニヒトデ=今年3月、沖縄県石垣市、伊藤恵里奈撮影

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 オニヒトデは直径30センチ前後になる大型のヒトデで、体は毒のある鋭いトゲに覆われている。大発生すると、その海域のサンゴを食べ尽くし、壊滅的な被 害を与える。沖縄県の石垣島や西表島の周辺では現在、オニヒトデが急増しつつある。環境省の調査では、海底で目撃される個体数は06年度の約7倍。約20 年ぶりの大発生となる恐れがある。

 産卵のピークは5〜7月ごろで、幼生は海中を漂いながら2〜7週間生き続ける。灘岡教授らは、南の海で生まれたオニヒトデの幼生が、海流によってどのように拡散するか、スーパーコンピューターを使って計算した。

 その結果、石垣島や西表島の周辺海域で発生したオニヒトデの幼生は、年によっては5週間ほどで四国から紀伊半島の南岸に到達することが分 かった。国内外の20カ所以上でオニヒトデの遺伝子を調べると、紀伊半島や四国のオニヒトデの遺伝子は沖縄やフィリピンと極めて近く、予測が裏付けられ た。

 沖縄のオニヒトデが今後も増え続けた場合、大量の幼生が本州沿岸に襲来する可能性が高い。灘岡さんは「黒潮は、まるで海の中の高速道路。オニヒトデの幼生を本州付近まで一気に運ぶようだ」と話している。(山本智之)




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