2008年4月9日水曜日

asahi science aquarium museum environment

地元の自然、動物園・水族館で展示 環境考える契機に

2008年04月08日15時02分

 全国の動物園や水族館が、地元の自然の生態系を再現する展示に力を入れている。動物の生き生きした姿を際だたせる「行動展示」もとり入れ、「ご当地型行 動展示」として各地に広まっている。「足元の自然を見つめることで、広く環境問題を考えてほしい」。そんな願いが込められている。

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のとじま水族館の「イルカたちの楽園」。能登島沖の生態系を再現している=川津陽一撮影

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井の頭自然文化園の「現在の池」。ごみが浮く水槽で、カミツキガメなどの外来種が泳ぐ=吉田写す

 アクアマリンふくしま(福島県いわき市)は、地元の海辺を再現した「蛇の目ビーチ」を昨年4月から開放している。4500平方メートルの敷地に磯と干 潟、浜辺をつくった。潮の満ち引きも人工的に再現し、穏やかな波もたつ。春夏は水中に入ることもでき、砂地を掘ればアサリが出てくる。

 入園者数も、07年度上半期は前年比1割増の65万7千人と好調だった。広報担当者は「以前は『どんな珍しい生き物がいますか』と聞かれたが、今は『どんな体験ができますか』と聞かれます」。

 自然の再現には苦労もある。のとじま水族館(石川県七尾市)は昨年3月、近海をイメージした「イルカたちの楽園」をオープンしたところ、 1万匹のマアジと5千匹のマサバが、カマイルカなどにほとんど食べられてしまった。「想定外だった」と苦笑する桶田俊郎副館長は「魚を補充し、群れて泳ぐ 生態系をまた再現したい。漁師さんに頼むので、市場の相場を絶えず確認しています」と話す。

 こうした「ご当地型行動展示」の広がりについて、日本動物園水族館協会の北村健一専務理事は「メダカなど、以前は当たり前にいた生き物が今は珍しくなった。その結果、市民は『地元の生き物』に興味を持つようになった」と指摘する。

 「昔と今」の生態系を比較して展示しているのが井の頭自然文化園(東京都武蔵野市)だ。同園の1942年の開園当時を再現した水槽には、 豊かな水草に小魚が群生する。一方で、現在の姿を表す水槽には捨てられた弁当箱が浮き、外来種のカミツキガメが泳ぐ。担当者は「本当の姿を伝えて、自然や 環境の保護を考えてもらいたいと考えた」という。

 厚さ40センチにもなる氷の穴から、アザラシがひょっこり顔を出す。「行動展示」の先駆けとして全国に知られる旭山動物園(北海道旭川 市)は1〜2月、水面が凍ったプールでアザラシを泳がせた。イメージしたのは、流氷浮かぶオホーツク海。水面に顔を出して息をする哺乳(ほにゅう)類の特 性を生かした。

 その同園も、開発と無縁だった昔の石狩川の生態系を再現する新施設の構想を進めている。小菅正夫園長は「施設ができたら今の石狩川と比べてほしい。足元の自然の大切さがわかり、地球に優しい暮らしを心がけるようになると思う」と話す。(吉田純哉)




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