2008年10月8日水曜日

asahi shohyo 書評

偽善エコロジー [著]武田邦彦

年NaN月NaN日

 エコな人にはムッと来るタイトル。「そのくらいでちょうど目を引くと考え付けました」と担当編集の相馬裕子さん。「これまでのエコ活動が否定されるようで手にとるのが怖かった」という感想があるほどだ。

 エコ的活動にことごとく異論を唱える。レジ袋は、石油の不必要な成分を活用したものだから使用したほうが環境によい。廃止する とエコバッグ製造のために余計な石油を使わなければならない。結局のところ、レジ袋追放は、エコバッグと専用ゴミ袋を売りたいスーパーの戦略なのだとい う。またペットボトルは、分別回収されたすべてがリサイクルされていない。裏にあるのは業者の利権だ。

 著者は資源材料工学を専門とする工学博士。もし指摘の通りなら、地球温暖化防止という道を、われわれは逆走していることになるではないか。

 実際に環境事業に従事している人から「なんとなく感じていたことが腑(ふ)に落ちた」という賛成の声が届くほか、「データが信 用できない」という声もある。先のレジ袋でいえば、成分は不必要なものではない、といった指摘。賛成反対の双方の資料を使ってディベートの授業をしている 学校も。特ににぎやかなのはネット上で、情報が錯綜(さくそう)しているものの、活気のある論壇の様相を呈している。終章で著者は「心が満足していると物 は少なくてすむ」と主張する。これにも、多くの女性が賛同する一方、若い人からは「もっともらしい言い方が鼻に付く」という反発も。これほど「感想」を生 み出す本はめずらしい。

 流された情報をうのみにしてはいけない、と著者は言うが、本書が「自分で考えること」の契機になったのは間違いない。

    ◇

 10刷・21万部

0 件のコメント: