2008年10月15日水曜日

asahi shohyo 書評

授業が変わる 世界史教育法 [著]鳥山孟郎

[掲載]2008年10月12日

  • [評者]南塚信吾(法政大学教授・国際関係史)

■自分の問題として学ぶ世界史を

 なぜ世界史の教育方法が問題になるのだろうか。歴史一般のそれではなくて。これは多くの人が持つ疑問かもしれない。

 現実には、講義形式で世界史の教科書を教え、史実の暗記をしっかりさせるのでいいのだと考える先生が多い中で、授業にさまざまな工夫をこらして、高校生に自分の問題として世界史を考えてもらおうとする先生も同じくらい多くいるのだ。

 長年世界史教育の理念や方法を考え続けてきた著者は、後者の立場から、さまざまな教育方法の実践をしてきており、それをここで 紹介している。「世界史通信」で生徒との交流をはかる、絶えず日本との関係で疑問を投げかけて資料を読ませる、実物を素材にして世界史を考えさせるなど、 実例は枚挙にいとまがない。

 世界史は生徒にとって自分と直接的な関係がないだけに、それを自分の問題として受け止めてくれる教育ができれば、それこそが歴 史教育の本質であるだろう。本書では、歴史一般の教育と、世界史の教育とが、二重に述べられているように見えるが、それは世界史教育にこそ、歴史教育の基 本的な問題が集約されているからに他ならない。たとえば、「歴史的思考」の問題は、世界史教育でこそ注目されるのだ。

表紙画像

授業が変わる世界史教育法 (AOKI教育LIBRARY)

著者:鳥山 孟郎

出版社:青木書店   価格:¥ 2,940

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