2008年10月29日水曜日

asahi shohyo 書評

超「超」整理法 [著]野口悠紀雄

[掲載]2008年10月26日

  • [評者]勝見明(ジャーナリスト)

■分類するな。検索せよ

  ミリオンセラー『「超」整理法』から15年。「書き直す時がきた」と著者が実感したのはグーグルのメールサービス、Gメールとの出会いがきっかけだった。 ある日、大学の研究室で、自宅のパソコンに保存してある原稿が必要になった。原稿はメールで出版社にも送ってある。メールにアクセスし、ログ(送受信記 録)を検索すると引き出せた。

 ここで著者は、メールのログが一つのデータベースとなって、いつのまにかネット上に自身の「デジタル・オフィス」ができあがっ ていたことに気づく。特にGメールは「膨大なログ保存容量と強力な検索機能」が特徴。個人的に必要なデータも自分あてにメールで送れば、「オンライン格 納」ができる。あとはネットに接続してキーワードで検索すれば、いつどこでもデータを出せる。

 「超」整理法は紙の書類が対象だった。ひとまとまりをA4封筒に入れ、分類せず、時間順に並べる。多くの読者が分類の呪縛から解放された。そして今回、「分類するな。並べよ」から「分類するな。検索せよ」へ。もはや整理の必要はない、重要なのは検索力だ、と唱えるのだ。

 後半、ウェブ検索にまで広げ、検索力を磨く方法が説かれる。分野別に知識を積む既存の知の体系が崩れ、個別具体的な情報をその都度検索し、選別する新しいスタイルへ。最後は知のパラダイム転換に気づかせる構成が知的生産技術の第一人者らしい。

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