傷ついた画布の物語—戦没画学生20の肖像 [著]窪島誠一郎
[掲載]2008年10月26日
- [評者]多賀幹子(フリージャーナリスト)
■「生」の証しが与えてくれる勇気
作家である著者は97年、長野県上田市に戦没画学生慰霊美術館「無言館」を設立した。今年9月の無言館第二展示館開館を前に、本著に20点の作品を掲載、遺族などの話をもとに創作の経緯や由来をつづった。
紹介された20人は、東京美術学校(現在の東京芸大)、帝国美術学校(現在の武蔵野美大、多摩美大の前身)などで学んだ画学生がほとんど。多くが20代の若者で、外地で戦死や戦病死している。
「祖母なつの像」を描いた蜂谷清さんは、召集令状を受け取った日に祖母にモデルを頼み、幼い彼をおぶるときに羽織った半纏(は んてん)を着るよう注文した。半纏を燃える朱赤色で丹念にぬりこんだとき、「共有した短い歳月を、ひたすら自らの記憶の奥に刻印」したと著者は想像する。
片岡進さんは出征前夜、明け方まで一睡もせず石膏(せっこう)の「自刻像」制作にうちこんだ。それは「デスマスク」ではなく 「ライフマスク」であって、作者が今も在る「生」の証しと著者。ともすれば「哀れな戦争犠牲者の遺留品」とされる遺作は、私たちに共感と勇気を与えるとい う。
それでも収集展示は「当事者である画学生たちの諒解(りょうかい)や賛意」を得ていないと、彼らに許しを乞(こ)う著者の誠実さに打たれた。
- 傷ついた画布の物語—戦没画学生20の肖像
著者:窪島 誠一郎
出版社:新日本出版社 価格:¥ 1,680
0 件のコメント:
コメントを投稿