2008年10月7日火曜日

asahi shohyo 書評

メアリー・W・シェリー『フランケンシュタイン』 やなせたかし(上)

[掲載]2008年8月31日

■この傑作の影響受け アンパンマンを創作

 フランケンシュタインの映画をはじめて見たのは中学生の時だったが、この映画のボリス・カーロフの演じた怪物が映画史上に残る怪物メークの大傑作で、以後フランケンシュタインと言えばこのキャラクターがスタンダードとして定着。

 無名の怪物は怪物をつくったフランケンシュタインと誤解されて、世界中の人気者になる。原作者が実は18歳のメアリー・シェ リーという美少女で、ロマン派の詩人シェリーの妻であることを知ってから、どうしてもこの作者のことを知りたくなり、はじめて原作を読んで映画とはまるで ちがっていることにびっくりした。その後「フランケンシュタインの花嫁」といういくらかゲテものめいた続篇(ぞくへん)がつくられたが、実はこっちの方が 原作に近い。

 メアリー・シェリーの肖像はロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーの3階の一番奥の部屋にある。しかし今この絵に興味をもつひとはいない。

 科学的に生命を創造するというテーマのこの19世紀初頭にかかれた傑作の影響を強くうけてぼくはアンパンマンを創作した。(漫画家)

    ◇

 やなせさんが読んだのは79年1月、国書刊行会刊、臼田昭訳。現在は創元推理文庫などで読める。

表紙画像

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

著者:森下 弓子・Mary Shelley

出版社:東京創元社   価格:¥ 630

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