2008年10月7日火曜日

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ノーベル物理学賞、素粒子研究の日本人3氏に

2008年10月7日20時47分

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写真南部陽一郎さん=05年2月15日、京都大学、高橋一徳撮影

写真ノーベル物理学賞受賞の喜びを語る高エネルギー加速器研究機構名誉教授の小林誠さん=7日午後8時4分、東京都千代田区、小林正明撮影

写真ノーベル物理学賞を受賞し、会見する京都産業大の益川敏英教授=7日午後7時19分、京都市北区、山本裕之撮影

写真拡大日本人のノーベル賞受賞者

写真拡大物理学、化学、医学生理学各賞の国別受賞者数

 スウェーデン王立科学アカデミーは7日、今年のノーベル物理学賞を、米シカゴ大名誉教授で大阪市立大名誉教授の南部陽一郎氏(87)=米国籍=、高エネ ルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)素粒子原子核研究所の元所長・小林誠氏(64)と京都大名誉教授で京都産業大理学部教授の益川敏英氏(68)の3 人に贈ると発表した。日本人が3人同時受賞したのは初めて。

 日本人のノーベル賞受賞は02年以来で13、14、15人目。物理学賞は同年の小柴昌俊・東京大特別栄誉教授に続き、5、6、7人目。賞金は1千 万スウェーデンクローナ(約1億4千万円)で、南部氏に半分を、小林、益川両氏に4分の1ずつをそれぞれ贈る。授賞式は12月10日、ストックホルムであ る。

 南部さんの授賞理由は「対称性の自発的破れの仕組みの発見」。物質をつくる素粒子になぜ質量があるのか、という根源的な謎を解き明かす理論をつくり、その後の素粒子物理学の発展に大きな影響を与えた。

 「左右対称」とは、一般に左右を逆にしても、見た目などの性質が変わらないことをいう。物理学でもこうした「対称性」は変わらず、普遍的なものと考えられてきた。

 ところが、南部氏は61年、素粒子の世界で対称性が自然に失われてしまうケースがあるという考え方を初めて提唱した。「対称性の自発的な破れ」という考え方で、これに沿って素粒子の理論を見直したところ、さまざまな謎を解く糸口が見つかった。

 素粒子の質量の起源を探る研究や、自然界に存在する力を統一的に論じる研究は、南部氏の理論を土台に発展した。南部氏は、こうした斬新な考えを次々と打ち出した。

 小林氏と益川氏の授賞理由は「CP対称性の破れに関する理論的研究」。両氏は73年、宇宙の成り立ちにかかわる「CP対称性の破れ」という現象を説明するには、物質をつくる基本粒子「クォーク」が6種類必要だと予言した。

 この予言は、各種の実験でその正しさが確かめられ、素粒子物理学の基礎である「標準理論」の柱に発展した。

 「CP対称性の破れ」は、物質を形づくる「粒子」と、性質がさかさまの「反粒子」が、本来は対等であるはずなのに、崩壊のしかたが厳密には対等でなくなる現象を指している。64年に、米国の実験で「破れ」が発見されていたが、うまく説明する理論がなかなか現れなかった。

 小林・益川理論では、それまでは4種類と考えられていたクォークを6種類にする、という枠組みを導入した。クォークは実際には少しずつ別の種類と混ざり合って存在している。種類を増やすことで、対称性の「破れ」を鮮やかに導き出してみせた。

 当時、クォークの想定は4種類で、しかも3種類しか確認されていなかった。単独の粒子として取り出せないこともあって、存在自体を疑問視する専門家さえいた。

 小林、益川両氏は名古屋市出身。名古屋大で理論物理学を学んだ。この研究を発表したのは、ともに京都大助手だった73年。その後、小林氏は高エネルギー加速器研究機構教授、益川氏は京都大基礎物理学研究所長などを務めた。



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