ノーベル化学賞に海洋生物学者の下村脩さん(1/2ページ)
8日、米マサチューセッツ州の自宅でノーベル化学賞受賞の連絡を受けた後、電話で喜びを語る下村脩さん=AP
オワンクラゲが出す緑の光=下村脩さん提供
ノーベル化学賞の授賞理由になった緑色蛍光たんぱく質(GFP)。試験管のなかで光っている。名古屋大理学研究科の近藤孝男研究科長(後方)が紫外線をあてて見やすくし、報道陣に説明した=8日午後8時9分、名古屋大学、加藤丈朗撮影
スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、今年のノーベル化学賞を米ウッズホール海洋生物学研究所・元上席研究員の下村脩(おさむ)さん(80)と米国 の研究者2氏の計3人に贈ると発表した。下村さんは、オワンクラゲの発光の仕組みを解明する過程で、緑色蛍光たんぱく質(GFP)を分離し、その構造を解 明した。GFPは、生命科学の研究で、細胞内で動く分子にくっつけて追跡する便利な「道具」として世界中の研究者に使われている。
日本人のノーベル賞受賞は16人目。化学賞は02年の田中耕一・島津製作所フェローに続き5人目。授賞式は、12月10日にストックホルムである。賞金1千万スウェーデンクローナ(約1億4千万円)はともにGFPを研究した共同受賞者の3人で分ける。
たんぱく分子は大きさがわずか10ナノメートル(ナノは10億分の1)程度と小さく、そのままでは光学顕微鏡で観察できない。そこで、特定のたんぱく分子に目印の電球のようにGFPをつけて光らせることで、観察できるようにした。
下村さんは、発光する生物から発光物質を取り出し、その仕組みを地道に研究してきた。1962年、オワンクラゲから、発光物質としてイクオリンと いうたんぱく質とGFPを取り出して発表した。70年代に、イクオリンがカルシウムと結合することで青く光り、そのエネルギーを使ってGFPが緑の光を出 すことを解明した。
90年代になり、米国の研究者によってGFPをつくる遺伝子が同定され、ほかのたんぱく質とくっつけて細胞に組み込む方法が開発された。細胞が生きたまま、中のたんぱく質を観察する手法として世界中の研究室で使われている。
ノーベル化学賞の授賞理由になった緑色蛍光たんぱく質(GFP)。試験管のなかで光っている。名古屋大理学研究科の近藤孝男教授が紫外線をあてて見やすくし、報道陣に説明した=8日午後8時9分、名古屋大学、加藤丈朗撮影
共同受賞者は米コロンビア大のマーティン・チャルフィー教授と米カリフォルニア大サンディエゴ校のロジャー・チェン教授。チャルフィー教授はGFPを実際に細胞内に入れ、発光させることに成功した。チェン教授は緑以外の色にも光るようにするなど、手法を発展させた。
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〈下村脩さんの略歴〉
1928年 京都府生まれ
51年 長崎医科大付属薬学専門部卒業
55年 名古屋大学理学部有機化学研究生
60年 米プリンストン大学研究員
63年 名古屋大助教授
65年 米プリンストン大上席研究員
81年 米ボストン大客員教授
82年 米ウッズホール海洋生物学研究所上席研究員
01年 自宅に研究室をつくり、研究を続ける
07年 朝日賞
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