古事記ブーム 古代日本のファンタジーに浸りたい
[掲載]2008年10月5日
- [評者]依田彰
古事記ブームが続いている。スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」は客を呼び、高速バス「スサノオ号」で神話の故郷を訪ねる古代ロマンの旅も人気だ。背景には近 年、テレビ番組「まんが日本昔ばなし」調の口語訳がヒットし、成立をめぐる新たな偽書説も登場するなど、古事記への根強い関心がある。
そんな中、古事記偽書説を整理し、古事記編纂(へんさん)の意図に迫る本が出た。『古事記の歴史意識』は偽書説が250年前の 江戸中期からあり、それらは太安万侶(おおのやすまろ)の「序文」に集中しているという。著者は文字や表記、「日本書紀」「万葉集」などとの比較分析を通 して偽書説の不備をただす。そのうえで7〜8世紀の「天武朝あるいは元明朝の事情」を考慮しながら「皇位継承史そのものに光を当てて」、古事記上中下巻成 立の問題点を実証的に解き明かす。
戦中、国民学校で「神話を政治的に利用した時代の極端なイデオロギー」を学ばされたという作家の『古事記の真実』は上巻(神代 編)を基に、作家的確信から稗田阿礼(ひえだのあれ)は日本最初の女性作家、日本語の父は天武天皇といった持説を展開。国家神道や皇国史観とは元来無関係 としたうえで、「天地(あめつち)を祭る。天地に祈る。天地に感謝する」信仰心も語る。
神話時代を想起させるビジュアル入門書も出た。中心的舞台の伊勢、宗像、出雲、筑紫、大和の写真と江戸時代の神代絵などを入れ た『図説古事記』は全巻から皇統譜の部分を除き、現代語で抄訳したもの。物語の大きな流れがつかめる。『五月女ケイ子のレッツ!!古事記』は、古事記上巻 をモチーフに、山岸涼子や安彦良和とは異なる、スコーンと抜けたタッチがすがすがしいほど明るい現代漫画だ。
疑問点を整理し、わかりやすい入門書で古代日本の一大ファンタジーを再発見したら、次は現代語訳全巻の読破にも挑戦してみたい。
- 古事記の歴史意識 (歴史文化ライブラリー 260)
著者:矢嶋 泉
出版社:吉川弘文館 価格:¥ 1,890
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- 「古事記」の真実 (文春新書 649)
著者:長部 日出雄
出版社:文藝春秋 価格:¥ 893
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- 図説|古事記 (ふくろうの本)
著者:石井 正己
出版社:河出書房新社 価格:¥ 1,890
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- 五月女ケイ子のレッツ!!古事記
著者:五月女 ケイ子
出版社:講談社 価格:¥ 1,365
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