ノーベル文学賞に仏のル・クレジオさん
ル・クレジオさん=06年2月、東京都国立市
【ロンドン=土佐茂生】スウェーデン・アカデミーは9日、今年のノーベル文学賞をフランス文学を代表する小説家ジャンマリ・ギュスターブ・ル・クレジオさん(68)に授与する、と発表した。
同アカデミーは「断絶、詩的な冒険、そして官能的な悦楽の作家。支配的な文明との枠を越え、またその裏をかいて人間性を追究した」と授賞理由を説明した。賞金は1千万スウェーデンクローナ(約1億4千万円)。授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれる。
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40年、南仏のニース生まれ。両親ともにフランスからインド洋モーリシャス島に移住した家系で、父はイギリス籍、母はフランス籍。63年、軍隊か病院の ような隔離的環境から逃げ出した若者の目に映る世界を詩的に描いた長編「調書」で、フランスの主要な文学賞のひとつルノード賞を受賞、衝撃の文壇デビュー を飾った。
「調書」に続く65年の短編集「発熱」、66年の長編「大洪水」の3作で、神話的な象徴性を帯びた独特の小説世界を確立した。以後、メキシコや日 本など異文化圏への旅に啓示を受けて書いた長編「逃亡の書」や、パナマでの現地の人々との共同生活に題材を求めたエッセー「悪魔祓(ばら)い」などを精力 的に執筆。一連の作品に、子どもや女性、貧困に苦しむ外国人など疎外された存在に対する共感を託した。その後の主な作品に歴史的時間とは何かを問う長編 「砂漠」「黄金探索者」など。「偶然」「アフリカのひと 父の肖像」ほか邦訳多数。
フランスとモーリシャスの国籍をもつ。アフリカで少年時代の一時期を過ごし、中米インディオ文化にも傾倒する。06年、39年ぶりに来日。東京のほか北海道や奄美大島などを旅した。
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