2009年11月4日水曜日

mainichi shasetsu 20091104

社説:連合 非正規労働の改善こそ

 連合は来年の春闘で初めて組合員以外の非正規雇用労働者に対しても処遇改善などの課題に取り組む方針を決めた。連合が結成されて20年、今年は総 選挙で全面的に支援した民主党が政権を取り、政策決定に直接影響力を発揮できる立場となった。組合員の既得権を守るだけでなく、全労働者の3分の1を占め るパートや派遣など非正規雇用労働者の処遇改善に取り組むのは当然である。連合が労働者全体の利益のために責任を果たそうとする組織へと脱皮できるかどう かが問われている。

 失業率は2カ月続けて改善を見せているが、雇用情勢は相変わらず厳しい。政府は年末に向けての緊急雇用対策を発表したが、新たな財源措置はなく、 麻生政権の雇用対策の運用改善にとどまるのが実情だ。雇用調整助成金を受けている人は現在約250万人に上るが、年明けから支給期限が切れる人が続出し、 新たな雇用創出をしなければ大量の失業者が出る恐れがある。このため大企業はベースアップ(ベア)を求めず賃金水準を維持することを春闘の基本的考え方と した。連合傘下の組合員の8割が働いている中小企業ではベアを求めるが、そうしなければ景況感の改善が見られない中小企業の労働者の賃金水準や雇用自体を 維持できないとの危機感があるためだ。

 非正規雇用労働者に関する具体的取り組みとしては、「正規労働者との均等・均衡処遇の実現」「社会保険・労働保険を含む処遇に関する労使協議の徹 底」を挙げる。どの企業でどのくらいの非正規雇用労働者が働いているのか労使とも基本的なデータがないのが実情で、雇用契約のない人に関する労使交渉がで きるのかどうかも議論が分かれる。しかし、連合は「既存組合が労使交渉のテーブルに載せなければ解決の緒に就かない」との強い意志を示し、労使交渉を拒否 した企業名を公表することも検討している。

 労組に入っている人は雇用労働者の18.1%に過ぎず、連合も発足当初の800万人から現在は675万人にまで減った。自民党の小泉政権下では経 済財政諮問会議などで経営側の意向が政策決定に強く反映されるようになり、連合の存在意義は低下していくばかりだった。民主党政権の誕生と時を同じくして 新会長に就任した古賀伸明氏は「18%の利益を追求するのではなく、働く者全体の幸せをどう追求するかで国民の共感を呼ぶかどうかが決まる」と話す。正社 員、大企業、官公労の意見を代弁する組織から、すべての労働者の声を反映する組織を目指すというのである。春闘も業種別の闘争よりも、働き方ごとの取り組 みへ変わる必要があるのではないか。

毎日新聞 2009年11月4日 2時30分



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