社説:郵政新体制 肥大化へ逆戻りせぬか
日本郵政の新体制が発足した。しかし、「新」という形容がふさわしいとはどうにも思えない。選出された経営陣の顔ぶれをみると、官への回帰が鮮明だからだ。
西川善文社長の後任に就いたのは元大蔵次官の斎藤次郎氏で、さらに4人の副社長の中には坂篤郎前内閣官房副長官補と足立盛二郎元郵政事業庁長官が含まれている。5人の社長・副社長のうち過半の3人を官僚OBが占める。
脱官僚が鳩山政権が掲げているスローガンだ。そのため天下りの禁止も唱えている。ところが今回の日本郵政の人事は、天下りを繰り返す、わたりではないか。
鳩山由紀夫首相は、日本郵政の人事について、亀井静香金融・郵政担当相に一任したという。しかし、看板に偽りありということになると、鳩山政権への打撃となりかねない。
民主党としての考えをきちんと示すべきで、少なくとも亀井氏に振り回されているという印象を取り除くようにしないと、国民の信を得ることはできないだろう。
斎藤新社長は、地域金融機関との連携、全国の郵便局ネットワークの活用などを打ち出し、4分社体制の見直しについても年内に方向を示すという。
郵便、郵貯、簡易保険について全国で一体となったサービスを展開するうえ、地域サービスの拠点として郵便局を位置づけるというわけだ。年金や介護など、いろんなアイデアが出ており、斎藤社長は積極的に取り組む姿勢を示している。
情報伝達の電子化が進む中でも郵便事業は継続していかなければならない。しかし、財政投融資の財源集めという役割を失った郵貯と簡保との一体運営では、いずれ支えきれなくなるということが、郵政改革の原点だった。
郵政3事業の一体運営に加え、郵便局をさまざまな公的サービスの拠点とする。これによって委託料などの形で公的な支援が行われれば、郵政3事業はこれまで通りやっていける。そんな思惑が、今回の官への回帰の背景にあるのではないか。
しかし、これはかつて模索された郵便局でのパスポートの発給など、郵政肥大化路線への逆戻りを意味する。
そうなると、民間金融機関との競合や巨額の資金の公的金融への滞留、さらに、効率性を担保し国民への負担を回避するといった問題が蒸し返されることになる。
こうした疑問に答えを出し、国民が納得できる形で将来の郵政の姿を示すことが果たしてできるのだろうか。新体制となった日本郵政がどのようなプランを出してくるのか、注視していきたい。
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