2009年11月4日水曜日

asahi Okuyami おくやみ レヴィ・ストロース

「悲しき熱帯」レビストロース氏死去 「構造主義の父」

2009年11月4日1時35分

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 【パリ=国末憲人】20世紀を代表する思想家で文化人類学者のクロード・レビストロース氏が死去したと、AFP通信が3日、出版社の情報として伝えた。100歳。今月28日には101歳の誕生日を迎えるはずだった。

 同氏はパリ在住。メディアにはほとんど出ないが、健康で、旅行もしていたという。今年に入って一時健康を害したものの、頭脳の明敏さは相変わらずだったという。

 昨年11月に同氏が100歳の誕生日を迎えた際には、地元フランスのサルコジ大統領が訪問して敬意を表した。大統領府によると、現代社会の今後についてサルコジ大統領と意見を交わしたという。様々な記念行事も催された。

 レビストロース氏は構造主義の父といわれ、55年に発表した「悲しき熱帯」が人文社会科学全般に大きな影響を与えた。日本文化の愛好者としても知られる。

     ◇

 レビストロースさんは1908年、ベルギー生まれ。パリ大学で法学と哲学を学ぶ。35年、サンパウロ大学の社会学教授として赴任したブラジルで現地のイ ンディオ社会を調査する。その後アメリカでも教えるが、戦後フランスに戻り、59年、コレージュ・ド・フランス社会人類学講座の初代教授となった。

 ソシュールの言語学などの影響を受けながら、世界各地の民族誌データや神話などの分析を踏まえ「親族の基本構造」(49年)、「構造人類 学」(58年)、「野生の思考」(62年)などの著作を次々と発表。未開社会の婚姻形態の比較などをもとに、人類の社会、文化には共通する不変の基本構造 があるとする「構造主義」は、学界に大きな衝撃を与えた。

 「野生」「未開」の中に現代文明の原型をみるその思想は、進歩主義的で人間の理性の働きを重視する近代思想・哲学の西欧中心主義と鋭く対立。人間の主体性を特に重視した当時の思想界の大潮流だったサルトルの実存主義への批判は、大きな「事件」となった。

 その後も構造主義の考え方は、フーコーやガタリら多くの思想家に影響を与え、20世紀ではマルクス主義と並ぶ最も大きな思想潮流として、現代まで引き継がれている。

 その業績によって、フランス以外の多くの国のアカデミーの会員に選ばれ、また親日家で何度も来日している。





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