2009年11月3日火曜日

mainichi shasetsu 20091031

社説:「仕分け人」混乱 政権の看板事業が泣く

 これでは、政権の看板の先行きが危ぶまれる。政府の行政刷新会議が行う「事業仕分け」チームへの新人議員の起用をめぐり政府と民主党の小沢一郎幹事長ら党側の調整が混乱し、陣容が大幅に縮小された。

 首相官邸、党側の意思疎通にまずさがあったとはいえ、政府が進めた人選が党側の意向でここまで覆るのは、異常である。鳩山由紀夫首相を長とする政 府と、党を仕切る小沢氏の二重権力化という政権の不安要因が表面化した形だ。収拾に動かなかった首相の指導力に、疑問を抱かざるを得ない。

 行政のムダ一掃に向け発足した刷新会議の目玉が「事業仕分け」だ。各省が予算計上を求める事業の必要性を国会議員、専門家らが公開の場で逐一、吟 味するものだ。仙谷由人行政刷新担当相は衆院の新人議員のうち14人を選び準備に乗り出したが党を仕切る小沢氏が難色を示したとの情報が伝わり、作業は中 断した。

 結局、国会議員からは新人を除く7議員の参加にとどめることとし、チームは縮小された。来年度予算編成を控え貴重な日数を費やし、陣容の立て直しにも労力を割かざるを得ない。そのあおりで仕分けの対象とする事業も絞り込まざるを得ないとすれば、失態である。

 無視できないのは政府は首相、党務は小沢氏と意識的に徹底していた政権の分業体制のほころびを露呈したことだ。

 新人に「仕分け」をさせる是非はいちがいに決めつけられない部分がある。新人とはいえ有権者から選ばれた国会議員は中堅、ベテランと同様の仕事を 任せるべきだ、というのが筋論だ。一方で小沢氏は「分厚い資料(予算書)を見なければならない」と新人による作業に疑問を投げかけたという。経験の浅い新 人を活用しても結局は会議事務局を仕切る官僚らに誘導され、見せかけの政治主導となる懸念は否定できない。

 だからこそ、政府と党は意思疎通に万全を期すべきだった。「必殺事業仕分け人」と持ち上げながら、調整に動かなかった首相の対応は問題だ。党側 も、人物本位で新人起用を認める柔軟さが必要だった。かたくなな対応では「小沢チルドレン」の囲いこみ優先、との指摘を免れまい。

 出足でつまずいた刷新会議だが、早急に仕分けチームを立て直し、作業を進めねばならない。議員メンバーは絞られたが、結果を示せるかは必ずしも人数の問題であるまい。

 それ以上に、刷新会議の議長である首相が、作業断行の決意を示すことが重要だ。人選ひとつで小沢氏の意向をうかがっているようでは、ムダ削減に抵抗する勢力からも足元をみられるばかりである。

毎日新聞 2009年10月31日 0時03分




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