社説:日航再建 公的資金の重さ認識を
日本航空の再建が、国の管理下で進められることになった。前原誠司国土交通相が任命したJAL再生タスクフォースが、企業再生支援機構の活用が必要との報告書をまとめ、これを受ける形で日航は機構に支援を要請した。
タスクフォースのメンバーは、再建策を取りまとめ、それを実行するため日航の経営に参画することも想定していた。しかし、日航にたまった積年の負 の遺産を解消に向かって導くのは大変な作業だ。法的な裏付けを持たず、資金拠出などの権限もないタスクフォースにとっては、荷が重すぎた課題だったよう だ。
経営再建の道筋が不透明だとして銀行団と折り合えず、債務削減について合意を得ることができなかった。公的資金の投入については、国民の理解が必要だが、その前提ともいえる企業年金の給付引き下げについても、具体的な方策を示すことができなかった。
タスクフォースの報告書は公表されないままお蔵入りとなった。そして、日航の再建は、自公政権時代に仕組みがつくられ、業務を開始したばかりの企業再生支援機構にゆだねられた。
政治主導とはいうものの、意気込みだけでは、どうにも歯が立たなかったということだろう。
企業再生支援機構は、経営不振に陥った企業の再生に取り組むためつくられた官民出資のファンドで、支援機構は改めて日航の資産査定を行い、銀行などの債権者との調整を経て支援策を策定する。
総額1兆6000億円の公的資金枠を持ち、それを使って出資や融資、銀行からの債権の買い取りなどを行い、3年以内の再生をめざす。
ただし、日航の資金繰りは厳しい状況が続いている。機構による支援決定までに時間が必要で、つなぎ資金を確保するため政府は特別措置をとらざるを得ないという状況だ。
日航が自立した企業として再生することが必要であることは、言うまでもない。そのためには、会社更生法や民事再生法などを適用して法的整理を行う という選択もあったはずだ。しかし、政府は、私企業である日航の再建に、国民の負担に結びつく公的資金の活用という道を選んだ。政府の責任は重い。
赤字路線からの撤退や人員削減も必要だろうし、企業年金の給付水準の引き下げについては、強制的な減額を視野に入れた特別立法なども検討されるという。
これまで手がつけられなかった分野についても、きちんとした対応をし、困れば国の支援に頼るという日航の経営体質を、抜本的に改革してもらいたい。
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