社説:太陽光発電 一歩踏み出す姿勢で
太陽光発電で余った電力を2倍の価格で電力会社が買い取る制度が今月から始まった。地球温暖化対策の柱のひとつが再生可能エネルギーの活用で、家庭の屋根を利用できる太陽光発電は、一般の人も比較的参加しやすい省エネの取り組みだ。
日本は太陽光発電用パネルの開発で先行してきた。しかし、08年の年間発電導入量は6位に下がってしまった。累積導入量でも05年に、世界一の座をドイツに明け渡している。
政府が住宅用太陽光発電に対する国の補助を打ち切り、設置が伸び悩んだためだ。
そこで政府は、補助制度を復活したうえ、家庭や学校などが余った電力を売却する際の価格を、11月から1キロワット時当たり24円程度から同48円に引き上げた。
電力会社は10年間買い取りを義務付けられており、この期間に設置費用を回収できるようにしようというわけだ。
買い取り価格が上昇する分は、全体の電気料金に上乗せされ、国全体で広く薄く負担する仕組みになっているが、こうした施策の結果、太陽光パネルの設置の申し込みが大きく増えている。
太陽光の利用は世界的に拡大が見込まれている。この分野で日本がリードを続けるためにも、積極的な施策が必要だ。
そこでポイントとなるのが、与党となった民主党が、太陽光だけでなく風力なども含めた再生可能エネルギーを買い取る新制度の創設を公約している点だ。
これについて菅直人国家戦略担当相は「来年度からやろうと思っている」と述べ、再生可能エネルギーによる発電について、全量を電力会社に買い取らせる仕組みの早期実施を表明した。
余剰分だけでなく全量買い取りとなると、自分で使う電力は電力会社から安く買う一方、発電した電力は高く売ることによって利益を得ようとする人たちも出てくるだろう。
ドイツはこうした仕組みの導入により、太陽光発電で首位に立ったわけだが、そのコストも国全体で負担することには異論もあるだろう。また、再生可能エネルギーによる発電量が増え過ぎると、電力供給が不安定になるという指摘もある。
しかし、太陽光発電で日本の順位が下がったのは、導入に伴うさまざまなコストを誰が負担するのかについて、結論を出せなかったからではなかったか。
再生可能エネルギーの利用拡大によりビジネスが活性化すれば、経済浮揚効果も期待できるはずだ。まず一歩踏み出すという姿勢で、この問題には取り組んでもらいたい。
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