2008年3月17日月曜日

asahi international nature adventure antarctic stone nankyoku

南極の石、持ち帰っていいの?

2008年03月15日19時05分

 記念だとしても、南極の石を持ち帰っていいのか——。世界7大陸の最高峰の単独登頂に挑戦中の登山家が、南極最高峰の山頂付近から持ち帰った小石を盗ま れたとして警察に届けたところ、山岳関係者らから「石の持ち帰り」そのものを批判する声が上がった。環境省も「好ましくない」との見方だ。環境問題に取り 組んでいる登山家の野口健さん(34)に朝日新聞が意見を求めたところ、自分も同じ経験をしたことを明かしたうえで言った。「機会があれば戻しに行きた い」

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ビンソン・マシフの頂上で旗を掲げる栗城史多さん。この旗も盗まれた(栗城事務局提供)

 盗まれたのは札幌市の登山家、栗城史多(くりきのぶかず)さん(25)。昨年末に登頂した南極最高峰ビンソン・マシフ(4897メートル)の山頂付近か ら持ち帰った小石数十個が1月中旬、車上荒らしにリュックサックごと盗まれた。札幌南署に届けた栗城さんはマスコミ各社の取材にも応じて「記念のために持 ち帰ったもの。返して欲しい」などと訴えた。

 しかし、山岳関係者の間で、「記念として持ち帰っていいのか」「登山家の良識としてどうか」などと問題視する声が上がり始めた。

 環境省は、無断で持ち出せば、南極の環境と生態系を保護することを目的として作成された南極条約議定書に抵触する可能性があるとし、「研究や調査でなく石を持ち出したのなら好ましくない」としている。

 一方、日本山岳会などによると、登頂記念に石を持ち帰る登山家は多く、「悪習」になっているのが現状という。同会の宮崎紘一常務理事は 「持ち出しの是非は、まだ登山家各自の判断による部分が大きい。南極のように決まりはないとはいえ、エベレストなど登山者が増えた山から皆が石を持って 帰っても問題になる。もっと議論があっていい」と話す。

 栗城さんは現在、7大陸最後となるエベレスト登頂の準備のため山ごもり中。事務局スタッフの児玉佐文さんは「栗城は南極に行った証しとして『甲子園の土』のような感覚で持ち帰ったと話しています。指摘を受けて以降、自らの軽率な行動を深く反省しています」と話す。

 札幌南署によると、盗まれた石は、まだ見つかっていないという。

 ■野口さんも持ち帰り、「機会あれば戻す」

 朝日新聞の取材に対し、登山家の野口健さんは94年のビンソン登頂の際、問題があることを意識しないまま、記念と贈呈用に石を二つ持ち帰ったことを打ち明けた。そのうえで、「原則的に禁止されていると分かった今、行く機会があれば、ぜひ南極に戻したい」と話している。



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