2008年3月20日木曜日

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オバマ氏に人種問題の影 親しい牧師が白人敵視の発言

2008年03月19日21時57分

 米国初のアフリカ系(黒人)大統領を目指すオバマ上院議員と、ヒラリー・クリントン上院議員が競り合う米大統領選の民主党候補者指名レースに、人種問題 が影を落とし始めた。親しい黒人牧師が白人敵視発言を繰り返していたことがわかり、これまでの人種融和の姿勢が疑問視されたオバマ氏は18日、フィラデル フィアで、人種問題をテーマに緊急演説。根深い差別の存在は認めつつ、融和は可能と懸命に訴えた。

 オバマ氏が人種問題に絞って演説するのは、実はこれが初めて。「黒人への人種差別は決して過去の話ではなく、今も続いている。一方で白人にも失業などの問題はあり、困難な状況は似ている。人種の違いを乗り越えて協力しなければならない」との内容だ。

 これまで人種問題への深入りを避けてきたオバマ氏は、米社会に横たわる差別の存在をはっきり認めた。

 フィラデルフィアで誕生した米憲法前文の「われら合衆国の人民は、より完全な連邦を形成し」から引用、「より完全な連邦へ」と題した演説は、オバマ氏が自ら筆をとって仕上げたという。

 オバマ氏が正面から人種問題を取り上げたのは、地元シカゴの教会でオバマ氏の結婚式や娘の洗礼を手がけるなど、同氏も「家族のようだ」と慕う黒人のライト牧師が、白人や米国を敵視するような「過激発言」を繰り返していたことが明るみに出たからだ。

 「白人のアメリカ合衆国だ」「広島、長崎を核爆弾で殺戮(さつ・りく)しても気に懸けなかった我々が、自分の庭先で(9・11の同時多発テロとして)起きると腹を立てている」

 ライト牧師が絶叫する場面が動画投稿サイトに流れると、米メディアが「人種を越えた統合」を説くオバマ氏の主張に疑問符を突きつけた。

 オバマ氏は当初「私が教会にいた時には聞かなかった」と弁明。逆に黒人牧師グループから「ライト牧師を切り捨てるのか」と批判され、窮地に陥った。

 18日の演説でオバマ氏は、牧師の言動を知っていたことは認めた上で、「彼の発言は間違いだ。団結が必要な時に分断をあおっている」と批 判。だが、発言の背景には黒人の置かれた厳しい状況があるとも訴え、「私が白人の祖母と縁を切れないように、彼との縁も切れない」と吐露した。

 しばらく沈静化していた人種論争が、長引く激戦で再燃。最近はクリントン氏支持派のフェラーロ元下院議員が「オバマが白人だったら今の立場にはいない」と発言し、物議を醸した。

 保守派の論客、ビル・クリストル氏は17日付の米紙ニューヨーク・タイムズで「知れば知るほど、平凡な日和見の政治家に見えてくる」とオバマ氏を酷評した。

 泥仕合を避けようと、今回、オバマ氏は正面突破で火消しを図った。だが、人種問題という「パンドラの箱」を自ら開けたことで、今後それを乗り越える力量が問われる。


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