2010年6月9日水曜日

asahi shohyo 書評

死ねばいいのに [著]京極夏彦

[掲 載]2010年6月6日

 派遣社員の若い女性アサミが殺された。「単なる知り合い」という青年ケンヤが彼女にかかわった人物を1人ずつ訪ね、アサミはどんな人 間だったかを問いただす。「無職のバカだから、まあ社会のこととか解(わか)んねーすよ」と自ら言うケンヤの問いかけに、派遣先の上司、隣室の女、アサミ のヒモだったヤクザ、母親、警察官らは、うそを暴かれ、心にまとった厚い衣を1枚ずつはぎとられていく。とどめを刺すように放たれるケンヤの言葉が「死ね ばいいのに」。

 描かれるのは、現代の究極の謎である人の心。その奥深くをのぞきこむ怖さに震える。

表紙画像

死ねばいいのに

著者:京極 夏彦

出版社:講談社   価格:¥ 1,785

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