縄文前期の人骨、男女象徴の道具と埋葬 富山の貝塚で
6千〜5500年前の貝塚から、男女を象徴する副葬品を抱いて埋葬された珍しい人骨などが見つかった。富山県文化振興財団埋蔵文化財調査事務所が24 日、日本海側で最大級の貝塚とされる富山市呉羽町北の小竹(おだけ)貝塚で、縄文時代前期の人骨13体が良好な状態で出土したと発表した。縄文時代の遺跡 で、男女を象徴する道具とともに埋葬された人骨が確認されるのは珍しい。当時の死生観や葬送の形を知る一級資料とみられる。
小竹貝塚の存在は戦後すぐから知られ、河川工事などに伴い県や市が断続的に調査してきた。今回は北陸新幹線の工事に先立ち、約1千平方メートルを調査し た。貝塚は「く」の字形に広がり、推定で約2万3千平方メートルの範囲に及ぶ。
今回の調査区は貝塚の中央南寄りにあり、計13体の人骨は、深さ最大1.7メートル以上の貝層の上から見つかった。1体が体全体を伸ばす伸展葬で、11 体は手足を折り曲げる屈葬、1体は頭部と足だけだった。大量の貝層がカルシウムを補給し、粘土層でパックされて酸素が入らないなどの条件がそろって良好に 残ったらしい。
このうち2体は同じ墓坑に埋葬され、1体は20センチ四方のくぼんだ石皿を抱き、もう1体は胴体付近に大小7点の石斧(せきふ)が置かれていた。縄文時 代の人骨に伴う石斧は男性の権威の象徴として、調理具の石皿は女性の象徴として副葬したとみられる例が報告されており、男女の社会的な役割を示していると される。
現地を確認した岡村道雄・奈良文化財研究所名誉研究員(考古学)は「人骨は、この貝塚の集団の長(おさ)的な男と女だろう。こうした人骨と男女の道具を 伴う埋葬例は縄文前期では初めて。当時の墓制を知る上で貴重な遺跡だ」と話している。
小竹貝塚ではこれまで、貝層と墓域と集落跡(竪穴住居群)が、そろってみつかっている。日本海側では、縄文前期の丸木舟などが出土した鳥浜貝塚(福井県 若狭町)があるが、それをしのぐ情報が得られると期待されている。
現地説明会は、26日午前10時〜正午、午後1時〜3時。問い合わせは同埋蔵文化財調査事務所(076・442・4229)へ。(大脇和明、天野彰人)
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