2010年6月17日木曜日

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日本の商業捕鯨、復活へのヤマ場 21日からIWC総会

2010年6月16日18時24分

 21日からモロッコで国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会が開かれる。最大の焦点は国際的な批判の強い南極海の調査捕鯨の扱いと、日本の商業捕鯨の復活 が認められるかだ。この20年間以上、捕鯨賛成派と反対派が激しくぶつかり、機能まひになっていたIWCにとっても正念場の会合となる。

 「沿岸の小型商業捕鯨が認められるかどうか、大変重要な瀬戸際にきている。予断を許さない」。山田正彦農林水産相は9日の就任会見で慎重に言葉を選ん だ。

 IWCのマキエラ議長が4月下旬に示した案は、日本の調査捕鯨や捕鯨国のノルウェー、アイスランドの商業捕鯨をIWCが一括管理し、全体の捕獲数を大幅 に削減するという内容。数は減らすが、商業捕鯨の再開を事実上認めるものだ。

 日本については、南極海での調査捕鯨の捕獲枠を最初の5年間で現在の半分以下となる約400頭とし、その後の5年間でさらに約200頭まで減らす。その かわり、日本が求めていた沿岸でのミンククジラの捕獲を年120頭を上限に認める。

 もともと、日本は調査捕鯨の規模を維持しつつ、沿岸での捕鯨も求める両面作戦だった。だが、前農水相の赤松広隆氏は方針を転換。沿岸捕鯨が復活するな ら、現在の調査捕鯨の縮小もやむを得ないとの「現実路線」にかじを切った。

 議長案に対し、日本は調査捕鯨の削減幅が大きすぎると表向きは反対しているが、水面下では「調査捕鯨が200頭まで減らされても、沿岸捕鯨の捕獲枠が増 えれば合意の道は探れる」(農水省幹部)と、さらなる譲歩の可能性も視野に入れている。

 一方、反捕鯨国にとっては議長案は受け入れがたいのが実情だ。IWCは反捕鯨国が主導する形で1982年に商業捕鯨の一時停止、94年には南極海をサン クチュアリ(鯨類保護区)にする案をそれぞれ採択した。しかし、議長案は、南極海の捕鯨禁止までは踏み込まず、沿岸の商業捕鯨も容認しているからだ。

 とくに反捕鯨国は日本の南極海での調査捕鯨を問題視している。豪州は、調査捕鯨の廃止を求めて国際司法裁判所(ICJ)に日本を提訴。米代表団を率いる 商務省のメディナ首席副次官は5月の記者会見で「議長案は賛成できない。南極海のサンクチュアリでの捕鯨は適切ではない」と話した。

 IWCにオブザーバー参加し、捕鯨国に影響力のある環境団体「バルダ・グループ」のレミ・パルメンティエ代表は、朝日新聞の取材に対し「将来的に日本が 南極海の調査捕鯨から完全撤退することが、合意への最低条件だ」と述べた。一方、日本側は「南極海での捕鯨の撤廃はあり得ない」(農水省幹部)との立場。 賛成派、反対派の溝は深く、総会での決着が先送りされる可能性もある。(古屋聡一、ロンドン=土佐茂生)





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