ビリー・ワイルダーのロマンティック・コメディ [著]瀬川裕司
[文]小林莉子 [掲載]2012年07月20日
マリリン・モンロー、シャーリー・マクレイン、オードリー・ヘプバーンなど数々の大女優をスクリーンの中で輝かせた天才監督ビリー・ワイルダー。 本書は、彼の作品の中でも恋愛喜劇として名高い「お熱いのがお好き」「アパートの鍵貸します」「昼下りの情事」を取りあげ、その魅力を紹介する。著者は、 映画学を専門として大学で教鞭をとる研究者。
ワイルダーの作品には不必要なショットが全くなく、どんな些細な場面にも、必ず必然性を持たせる。 「お熱いのがお好き」では、女装した登場人物のブラジャーの紐が切れるという一見、無意味な出来事がモンローの過去を詳らかにする役目を担う。「昼下りの 情事」では垂れている糸を見ると引っ張るというヒロインの何気ない癖が、恋人との偶然の再会のきっかけとなる。鏡面を使用した独特の技法など、小物使いも 秀逸。一つ一つの小道具が精密機械の歯車のように作動し合い、ストーリーを破綻なく紡ぎあげている。入り組んだ緻密な作品構造ゆえに、純粋無垢なヒロイン 達の笑顔がより輝くのだ。
この記事に関する関連書籍
ビリー・ワイルダーのロマンティック・コメディ 『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』『昼下りの情事』
著者:瀬川裕司/ 出版社:平凡社/ 価格:¥2,520/ 発売時期: 2012年02月
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