冥王星を殺したのは私です [著]マイク・ブラウン
[文]谷本束 [掲載]2012年07月13日
2005年、太陽系第十惑星・エリス発見に世界が驚愕したが、その1年半後、今度は冥王星もろとも「惑星ではない」と宣言される。エリス発見者にして、冥王星を"殺した"張本人である著者が、太陽系の姿を一変させた歴史的事件をつづったノンフィクション。
"十 番目の惑星"が見つかったのは、海王星の外側に広がるカイパーベルトという小惑星帯。エリスも冥王星も、そのたくさんの天体の一つにすぎないという。探索 のドラマもさることながら、本書が明らかにする太陽系は学校で覚えたものとはずい分違う。今も刻々と謎が明かされ続けていることに胸が躍る。
一方で、発見者の栄誉を横取りしようとする科学者が現れ、国際天文学連合は科学的事実を無視して冥王星を惑星のままにしておこうと画策する。科学界の醜い現実に唖然とさせられる。
著者は並行して、研究中に誕生した愛娘のこともユーモアあふれる筆で描く。掛け値なしの愛情と未知のものへの探求心。そのピュアな感情が本書をじんわり温かい人間物語にしている。
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梶山あゆみ訳
この記事に関する関連書籍
著者:マイク・ブラウン、梶山あゆみ、辻和希/ 出版社:飛鳥新社/ 価格:¥1,680/ 発売時期: 2012年05月
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