2012年7月18日水曜日

asahi shohyo 書評

「あまった食べ物」が農業を救う [著]山田浩太

[文]土屋敦  [掲載]2012年07月20日

表紙画像 著者:山田浩太  出版社:PHP研究所 価格:¥ 840

 日本では、食料の3割程度が廃棄される一方、農作物の成長に必要な三大栄養素、カリウム、リン酸、窒素のうちのカリの原料である塩化カリ、リン酸の原料であるリン鉱石を100パーセント輸入に頼っている。
 すなわち、日本の農業は、海外から大量の化学肥料を輸入して作物を育て、そうやってできた農作物を惜しげもなく捨てているという、非常に歪んだ状態にあるのだ。
 加えて各国には国内用の肥料確保のため、塩化カリやリン鉱石の輸出が止まる可能性があり、そうなったら化学肥料漬けの日本の農業は壊滅的な打撃を受ける。
 農業コンサルタントである著者は、それらの状況に危機感を持ち、生ゴミや残飯を生かして有機質肥料にし、それで作物を栽培し、それがまた残飯になったら有機質肥料にするという、循環社会のシステムを提唱するのだ。
 大所高所からの論ではなく、野菜の美味しさの科学的な解説や糞を肥料に変える発酵の仕組み、著者自身の取り組みなどが豊富に盛り込まれ、具体的かつ興味深い内容となっている。

この記事に関する関連書籍

「あまった食べ物」が農業を救う ウンコと生ゴミを生かす循環社会

著者:山田浩太/ 出版社:PHP研究所/ 価格:¥840/ 発売時期: 2012年05月

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