2012年7月6日金曜日

asahi shohyo 書評

重力とは何か―アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る [著]大栗博司

[文]瀧井朝世(ライター)  [掲載]2012年07月01日

表紙画像 著者:大栗博司  出版社:幻冬舎 価格:¥ 924

■“素人の目”で読みやすく

 机の上のペンがフワリと浮き上がらないのは、重力が働いているか ら。そのペンが机を突き破って地面に落ちないのは、重力が弱いから。私たちの生活、そして宇宙を支配するこの力の正体は何か。素粒子論の研究者が重力の基 本から最新の超弦理論(超ひも理論)までを解説し、宇宙の謎に迫っていく。初心者でも研究の全体を見渡せる画期的な一冊だ。
 担当編集者は村山斉 さんのベストセラー『宇宙は何でできているのか』を手掛けた小木田順子さん。「村山さんから素粒子の研究仲間に大栗博司さんという方がいると聞き、大栗さ んの講演会に行ったところ重力の話がとても面白くて」。そこで本書の企画を思いついた。「『宇宙は何でできているのか』が宇宙を作っている材料の話だとす ると、『重力とは何か』は宇宙のメカニズムの話だと思っていただければ」
 原稿の段階で物理に疎い同僚に読ませて感想を聞くなど、一般の人が理解 できるか“素人チェック”を重ねたという。その結果だろう、とにかく文章が読みやすくて素晴らしい。複雑な数式は一切使用せずにアインシュタインの相対論 などを解説してみせる。知識のある読者からは「オリジナルな説明の仕方が上手」「易しく書いているのに正確で、ごまかしがないところがすごい」といった声 が寄せられている。また、科学者たちの人間味あふれるエピソードを盛り込み、読み物として楽しませる工夫も。なんとイラストも著者によるもので、これがう まい。
 後半はやはり話が複雑になってくる。第七章のホログラフィー原理の話では「えっ」と驚く事柄が明かされ、物理の理論のはかり知れなさにのけぞった。
 現在、購買層は9割近くが男性、30〜40代がメーン。これから10〜20代、女性の読者も獲得していきそうだ。
    ◇
 幻冬舎新書、924円=5刷11万部

この記事に関する関連書籍


宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎

著者:村山斉/ 出版社:幻冬舎/ 価格:¥840/ 発売時期: 2010年09月

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