2009年5月13日水曜日

asahi shohyo 書評

鬼気迫る飢えとの闘い 映画「ミーシャ ホロコーストと白い狼」

[掲載]2009年5月9日朝刊be

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 少女はひたすら東へ歩く。42年、ナチスの「ユダヤ人狩り」にあった両親を捜し、ベルギーからドイツ、ポーランド、ウクライナへ。3千キロに及ぶ旅の慰めは、ときおり現れる白い狼(オオカミ)だった。

 旅を過酷にするのは食糧確保の困難さ。8歳のミーシャは鬼気迫る様子で、イノシシやウサギの生肉を食らい、土中のミミズをすする。一方、力尽きそうになると、どこからともなく現れる狼との交歓に伝統的な動物映画を見ている気分にさせられる。

 同名の原作(ミュゼ刊)は実話に基づくとされ、ベストセラーになったが、後に作者が否定。とはいえ、戦禍の悲惨さは伝わってくる。

表紙画像

少女ミーシャの旅—ホロコーストを逃れて3000マイル

著者:ミーシャ デフォンスカ

出版社:早川書房   価格:¥ 2,100

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